2019.5.26「捨てる力」羽生善治

羽生さんの本は「直観力」に続いて2冊目。今回もオーディオブックで「捨てる力」を読んだ(聞いた)。

先日の新聞では、羽生さんの通算勝利数が大山康晴15世名人に並び歴代1位の1433勝となった、とのニュース。

この本でも書かれているが、「才能とは努力を続けることのできる能力」まさにそのとことを体現した結果だろう。

本を読んで、いくつか心に残った言葉をメモに残す。

・新しいことを覚えるためには、古いことを忘れなくてはならない。

・人は選択しなかった選択肢を、必要以上に良いものと思ってしまう。それが後悔の原因となる。よい人生を歩むためには、選択したら選択しなかった選択肢のことを忘れること。

・リスクを恐れてリスクから逃げては、結果的に将来のリスクを増やしてしまう。積極的にリスクを負うことが、本来のリスクを最小化する。

・多くの情報から本当に必要な情報を得るためには、”選ぶ”より”捨てる”ことの方が大切。

・才能とは「努力しなくてもできること」ではない。「10年、20年と情熱を傾けて努力し続けることができる能力」を言う。

 

2019.5.12「健康は『内臓さん』で決まる」伊藤裕

Audiobookで聞き終えた本「健康は『内臓さん』で決まる」の内容を一言であらわすと、「”臓器の時間”がゆっくりと流れる生活こそ、健康で長生きするコツである」ということ。また、この本の中で一貫して「大切だ」と強調されているのは次の二つ。

「人は生きるために食べるのではない。食べるために生きるのである」

「仕事の合間に食べるのではない。食事の合間に仕事をする」

要は、「生きることの本質は食べること」

 

この本のポイントをいくつか記載してみる。

・健康と不健康の境界を考えたとき、「やや健康」とか「やや不健康」という状態はない。ある日突然、健康から不健康になる、これが病気のメカニズム。

・内臓ストレスを減らす方法は次の4つ

 ①空腹感と低酸素間を持つ

 ②いい思い出を大切にする

 ③正しい時間に沿って生活する

 ④慣れを取り入れる

・血液の使用量は、腸が30%、腎臓が20%、脳と骨格筋が15%。腸と腎臓が健康の要。

・太陽に合わせて生活する。

「昼間より夜は気が滅入るものだ。勇気は太陽とともにやって来る」デール・カーネギー

ミトコンドリアが酸素を消費してエネルギーを生み出す。ミトコンドリアの働きが鈍ると活性化酸素が増え、体内に悪影響を与え、臓器の時間を進めてしまう。

ミトコンドリアに緊張感を持たせ活性化する方法

 ①適度に空腹感を持たせる→糖質と資質を減らす

 ②適度に低酸素間を与える→無酸素運動をする

・オートファジーによってミトコンドリアをリニューアルする。

・過去の経験、繰り返しの経験を細胞に記憶として残す仕組み、経験によって遺伝子の働きを変える仕組み、これを「エピジェネティクス」という。

・遺伝子の情報は変わらなくても、遺伝子にくっつく分子によって、遺伝子の仕組みや性質が変わる。そしてその性質は一生涯あるいは世代を超えて受け継がれることもある。

・例えば、ミツバチの女王バチと働きバチは同じ遺伝子を持つ姉妹。幼い時にローヤルゼリーを食べた個体が女王バチになる。

・習慣そのものでなく、習慣を通した慣れが大切。この慣れによって内臓ストレスが軽減される。

・ダンバーによれば、私たちのネットワークは3の倍数で作られている。最も親しい人たち、無償でお金を貸すことのできる人は3~5人。その3倍にあたる10~15人はシンパシーグループ、共感できるグループで多くの団体競技の人数がこの範囲である。さらにその3倍45~50人は、原住民が集団で移動する単位。そしてその3倍の150人は人間のネットワークの限界、顔と名前が一致し関係を維持できる人数、つまりダンパー数。

・7000人を対象とした調査によると、社会的ネットワークが強い人、つまり血縁・地縁が強い人ほど長生きできることが分かっている。

人は人と人のネットワークを大きくするために脳を大きくしてきた。そして、そうすることで生き残ってきた。

 

最後に「大切な時間」を生み出す10ヶ条を示す。

1 ゆっくり食べると腸の時間は遅くなる

2 夜のコンビニは決して利用しない

3 小腹対策をしない

4 「空腹感」と「低酸素感」を与える

5 夜の運動よりも朝の運動

6 「赤ちゃんの生き方」を実践する

7 真面目な人をやめてみる

8 「3の倍数」で人付き合いを始める

9 できるだけ大きな妄想を巡らす

10 いい想い出しか入れない「マイアルバム」を作る

 

【おまけ】

この本で初めて聞いた言葉「エピジェネティクス」について、少し調べてみた。

エピジェネティクスとは?

私たちの体は皮膚や胃、腸、肝臓など様々な組織からできている。そして、これらの組織は別々の細胞から構成されている。どの細胞も同じ遺伝子を持っているのに、別々の組織になれるのは、使う遺伝子と使わない遺伝子に目印を付けているからである。エピジェネティクスとは、この目印を解明する学問ということができる。

皮膚から胃ができないことからわかるように、エピジェネティックな目印は、いったん付くと容易には外れない。

細胞内のDNAは、ヒストンと呼ばれるたんぱく質に巻き付いてできている。エピジェネティックな目印には、DNAにつく目印(DNAメチル化)とヒストンにつく目印(ヒルトン修飾)の2つが知られている。

国立がん研究センター 研究所のホームページより引用

 

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DNAメチル化とヒストン修飾

 

2019.5.6「影響力の武器」ロバート・B・チャルディーニ

久しぶりに読み返した「影響力の武器~なぜ、人は動かされるのか」(ロバート・B・チャルディー)、これで3回目。何度読んでも、読むたびに気付き学ぶことが多い。

私たちは、自分の自由意思で物事を決めていると思い込んでいるが、実際は無意識のレベルで影響を受け、その影響により行動している。チャルディーニは、この影響力を大きく6つに分類し、様々な研究や実験をもとに、具体的事例から分かりやすく解説している。

この本で紹介されている影響力の武器は次の6つ

①返報性、②コミットメントと一貫性、③社会的証明、④好意、⑤権威、⑥希少性

 まずは目次を示す。

第1章 影響力の武器

第2章 返報性…昔からある「ギブ・アンド・テイク」だが・・

第3章 コミットメントと一貫性…心に住む小鬼

第4章 社会的証明…真実は私たちに

第5章 好意…優しい泥棒

第6章 権威…導かれる服従

第7章 希少性…わずかなものについての法則

第8章 手っとり早い影響力…自動化された時代の原始的な承諾

各章のポイントを以下にまとめる。

 

第1章 影響力の武器

・動物は、「ある一定の刺激に対し決まった行動をする」という、あらかじめプログラムされた固定的な行動パターンを持っている。このパターンは多くの場合うまく機能する。動物である人間も同様である。

・人に何か頼み事する時には理由を添えると成功しやすくなる。人は単純に自分がすることに対して理由を欲しがる。コピー機に並んでいる人に対する実験では、

 「すみません。5枚だけなんですけど先にコピー取らせてくれませんか?」と頼んだ場合は60%の人が承諾。「すみません。5枚だけなんですけど、コピーを取らなければならないので、先にコピー取らせてくれませんか?」と頼んだ場合は、なんと93%が同意した。

・人は多くの場合、ある引き金に対して決められた反応を自動的にすることによって、貴重な時間やエネルギー、意志力を失わずに済ませることができている。この私たちが日常よく使う心理上の簡便法を「判断のヒューリスティック」と呼ぶ。

例えば、「高いものは良いものだ」「専門家が言うことは正しい」など。

・人間の知覚には「コントラストの原理」というのがある。二番目に提示されるものが最初に提示されるものとかなり異なっている場合、それが実際以上に最初のものと異なっていると感じてしまう傾向がある、ことをいう。

高価なスーツを購入した後は、セータやネクタイが実際以上に安く感じる。あるいは、高価な車を買った後は、数万円もするオプションがとても安く感じてしまう、など。

 

第2章 返報性

・この返報性のルールは、影響力の武器の中でも最も強力であり、「他人から受けた恩恵は、似たような形でそのお返しをしなくてはならない」というもの。

このルールは、民族や文化の違いに関わらず、すべての人間社会に浸透している。また、人間社会にだけある特徴でもある。

・著名な考古学者リチャード・リーキーは、「私たちを人間たらしめているのは返報性のシステムである」「私たちの先祖は、恩義のネットワークの下で食料や技能を共有してきた。そうすることで人間として進化することができた」と言っている。

・この返報性のシステム(報恩が織りなすネットワーク)によって、人々の労働が分担され、多種多様の物やサービスが交換され、結果、専門家が生まれた。そして、このことによって生み出される相互依存性が人々を結び付け、高度に能率的な社会が誕生した。つまり、「受けた恩義に必ず報いなければならない」という義務感は、社会の進歩にとって不可欠のものであった。

・社会の進歩、人間の進化という長い過程の中で、私たちは他人から恩義を受けると、その恩義を重荷に感じ、早く下ろしたいと思うようになった。

・同時に、返報性のルールを破る人、すなわち他者の親切を受け入れるだけで、それに対しお返ししようとしない人は、「たかり屋」「恩知らず」というレッテルを貼られ、社会のメンバーから嫌われるようになった。

・返報性のルールの特筆すべき三つの特徴

①このルールは極端までに強力な力を持っている。相手が嫌い、思想信条が異なるなどの他の条件を凌駕してしまう。

②このルールは、望んでいない好意を受けた場合でも適用される。借りを作る相手を自分で選ぶことはできず、その選択を他者の手に委ねることになる。

③このルールによって不公平な交換が導かれることがある。人は「恩義を受けてまだ返していない」という不快な気持ちを解消するため、親切を施された相手から何か頼まれると、それ以上のことをしてあげることが多い。

・試食をしたり、無料の試供品をもらうと「少しは買わないと悪いかな」と思うのも、この返報性のルールによるもの。

・相手の譲歩を引き出すためにも、このルールは利用される。

断られることを前提に大きな要求をし、断られると最初に譲歩して、そのお返しとして相手の譲歩を引き出す。これが「拒否したら譲歩」あるいは「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれるテクニックである。

拒否されるような大きな要求から、次に小さな要求(もともと目標としていた要求)に引き下げる。するとこの引き下げが譲歩に見られるため、相手に返報性のルールが働きこの要求が受け入れられやすくなる。

・知覚のコントラストの原理を、この譲歩戦略(拒否された後で要求を引き下げるという方法)の中に統合することによって、驚くような効果をもたらす。つまり、返報性と知覚のコントラストの影響を組み合わせることで、恐ろしいほどの強力な力が生み出される。

 

第3章 コミットメントと一貫性

・コミットメントと一貫性は、先の返報性に次いで強力な影響力を持つ。これは、ほとんどの人が持っている「自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたい。また、他の人にそう見られたい」という欲求のことである。

・この欲求は、三つの要素によってもたらされる。

①一貫性を保つことによって、社会の他のメンバーから高い評価を受ける。

②一貫性のある行為は、一般的に日常生活にとって有益である。

③一貫性を志向することで、複雑な現代社会をうまくすり抜けるシンプルな対応が可能となる。つまり、今までの決定と一貫性を保つことで、類似した状況に将来直面した時に、関連する情報すべてを処理する必要がなくなり、以前の決定を参考に、それと一貫するように対応すればよくなる。

 ・コミットメント、つまり自分の意見を言ったり、立場を明確にすること、をしてしまうと、人はそのコミットメントに合致した要請に同意しやすくなる。

したがって、多くの承諾誘導の専門家は、後で要請しようとしている行動と一貫するようなコミットメントを最初に取らせようと誘導する。

・しかし、すべてのコミットメントが同じように効果的ではない。行動を含み、公にされ、努力を要し、自分で選択した(強制されたのではない)コミットメントが最も効果的である。

・コミットメントを伴う決定は、それが間違っている時でさえ、人はその決定に固執するようになる。つまり多くの場合、人は自分がしたコミットメントについて、それが正しいということを示す新しい理由や正当性を付け加える。その結果、コミットメントを生んだ状況が変わった後でさえ、そのコミットメントの効力が持続することになる。

このような現象によって、「ローボール・テクニック」のような、人をだます承諾誘導のテクニックがなぜ効果を発揮するのかを説明することができる。

※ローボールテクニック:まず最初に、うまい話で重要な決定、つまりコミットメントを引き出しておいてから、徐々に好ましくない条件を付け加える、というやり方。

 ・カナダの心理学者の研究では、「馬券を買ったあとでは、馬券を買う前より、自分が賭けた馬の勝つ確率を高く見積もる」ということがわかった。

これは、自分が既にしたことと一貫していたいという、ほとんど強迫的とも言える欲求によるもの。人はひとたび立場を明確にすると、一貫性への欲求から自分がしたことと一貫するように感じたり信じたりするようになる。「自分は正しい選択をした。間違いなく十分に満足している」と、自分自身に信じ込ませる。

つまり、自分がこの馬券を買った以上は、「自分の選択は正しい、この馬が勝つ」と信じなくてはならない、という強い心理的圧力がかかるのである。

・ある問題に対して自分の立場をはっきりさせてしまえば、一貫してそれに固執することで大きな満足感が得られる。なぜなら、それ以上、その問題について真剣に考える必要がなくなるのだから。考えないで一貫性を保つことは人間にとって快適である。

「考えるという本当の労働を避けるために、人はどんな手段にも訴える」by ジョシュア・レイノルズ卿

言い換えれば、一貫性が思考からの退避場所としての役割を果たす、ということ。

・小さな要請から始めて、関連する大きな要請を最終的に承諾させるというやり方を、「フット・イン・ザ・ドア」テクニックと呼ぶ。これも、一貫性の原理を利用した手法である。

「安全運転をしよう」と書かれた看板を取り付けるように依頼した場合、承諾したのは17%。ところが事前(2週間前)に「安全運転するドライバーになろう」とかかれた3インチ四方のシールを玄関の上に貼ってもらっていた場合には、76%の家が看板取り付けを了承した。

・行動を伴うコミットメントをすると、二つの面から一貫性圧力がかかる。

①内からは、自己イメージを行動に合わせようとする圧力

②外からは、他者が自分に対して描いているイメージに、自己イメージを合わせようとする圧力

・「書くことには魔術的な力がある」

目標を設定し、その目標を紙に書くことで、人はより強くその目標にコミットさせられる。人は、書いてしまったことに見合うように行動する。

人は自分の言葉を裏切ることができない。

・何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、同じものを最小の努力で得た人と比べて、自分が得たものに対して大きな価値を置くようになる。

・人は外部から強い圧力を受けずにある行為をすることを選択すると、その行為の責任は自分にあると考える。逆に外部の圧力によってある行為を行った場合には、その行為にコミットしたとは思えない。価値ある報酬というのも外部からの圧力の一つ。それは、人に何かをさせることはできても、その行為に対する責任を感じさせることはできない。

・ローボールテクニックの具体例、オハイオ州立大学での実験。「学生に朝7時からの研究に参加してもらう」ということに同意する学生がどの程度いるかを調べたもの。最初から開始時刻が朝7時と告げた場合は、24%が同意した。次に、まず研究に参加したいかどうかを尋ね回答してもらってから時刻を告げた場合は、56%の学生が同意した。しかも研究に参加すると答えて後、開始時刻を聞いて考えを変えた学生はいなかった。さらに95%の学生が本当に約束の7時までに学校にやってきた。

このようにローボール・テクニックが印象的なのは、不利な選択で人を満足させることができるという点である。

 

第4章 社会的証明

・社会的証明は、「返報性」と「コミットメントと一貫性」にならぶ三大影響力の一つである。これは、人がある状況で何を信じるべきか、どのように振る舞うべきかを決めるために使う重要な手段の一つは、他の人々がそこで何を信じているか、どのように行動しているかを見ることである、というもの。

・他人を模倣することの強力な効果は。子供にも大人にも見られ、また、購買における意思決定、寄付行為、恐怖心の低減など、多様な行動で認められる。他の多くの人々が要請に応じた、あるいは応じていると告げるだけで、ある人をその要請に応じるように促すことができる。

・社会的証明は、二つの状況において最も強い影響力を持つ。

①不確かさ…人は状況が曖昧なとき、確信が持てないとき、他人の行動に注意を向け、それを正しいものとして受け入れようとする。

②類似性…人は自分と似た他者のリードに従う傾向がある。類似した他者の行動が人々の行動に強い影響を与える。

・他者の行動によって自分の行動が適切かどうかを判断するのは、多くの場合うまく機能する。一般的には、社会的証明に合致した行動をとるほうが、それと反対の行動をとるよりも、間違いを犯すことは少ない。

・自分で何を買うかを決められる人は、全体の5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちである。

・犬を怖がる子供に、同じ年ごろの子供が犬と戯れている様子を1日20分間見せると、4日後には一緒に犬と遊ぶようになった。泳げない子供に、同じ年ごろの子がプールで泳ぐ様子を見せると、その日に泳げるようになった。(類似性)

・人通りが多い歩道に立ち空をしばらく見上げてみる。たいていの人は見上げることなく通り過ぎる。次に、4人の友達を連れて同じ場所に行き、一緒に空を見上げてみる。60秒以内に多くの通行人が立ち止まり、同じように空を見上げるだろう。過去の実験によれば80%の通行人が空を見上げた。

・「集合的無知」…曖昧な状況のもとでは特に、他の人が何をしているのかを知ろうとする傾向を皆が持つことにより、集合的無知と呼ばれる現象が生じる。この一つの例として、人は集団になると援助をしなくなる、ということがある。これは、彼らが不親切だからではなく、確信が持てないために他人の様子を伺い合うことにより、誰も行動しないから緊急事態ではないと判断し、結果誰も援助しないということに陥る。

・「ウェルテル効果」…ドイツの文豪ゲーテは「若きウェルテルの悩み」と題する小説を出版した。主人公ウェルテルの自殺を扱ったこの本は、ヨーロッパ中でウェルテルを真似た自殺が相次ぐという驚異的な影響を及ぼした。いくつかの国では発行禁止にしたほど。

・誰かの自殺が新聞の1面を飾ると、その自殺が広く公表された地域で、その直後、飛行機や自動車事故が急増する。新聞がその自殺を取り上げなかった地域では、事故は増加しない。

一人だけの自殺の新聞記事の後は、一人の事故死が増加し、自殺プラス殺人が報道されると多数の死者が出る惨事が増加する。

これは、まさに社会的証明が顕在化した例である。彼らは自分が自殺下を見られることを望んでおらず、事故死として扱われたいと考えた。模倣が鍵なのである。

新聞が若い人の自殺を報じると、その後の事故では若いドライバーが増え、老人の自殺がニュースで流れた後には、お年寄りのドライバーによる事故が増える。

・千人の共同社会というのは、一人の人間のパーソナリティの力によって支配するには大き過ぎる。しかし、群れの心理を操るのは容易なことである。何人かのメンバーを自分が望む方向に向けておきさえすれば、残りの人々は、おとなしく、そして機械的に従うものである。

・社会的証明の原理を使った例として、テレビのお笑い番組で使われる「録音笑い」がある。また、グランドオペラにも「歌劇成功請負人」という肩書のもとサクラを行うことが、パリで1820年から始まったと言われている。サクラにはリーダがいて、その合図で泣く‘’泣き手‘’、笑う‘’笑い手‘’、さらには「もう一度」とか「アンコール」を繰り返す‘’叫び手‘’がいた。これらのサクラを募集した新聞広告も残っており、この広告には料金まで載っている。

 

第5章 好意

・人は自分が好意を感じている知人から頼みごとをされると、つい「イエス」と言ってしまう傾向がある。好意を高める要因には次の五つある。

①身体的魅力…好意に影響する要因の一つとして、その人の身体的魅力がある。身体的な美しさが社会的相互作用の中で有利に働く、しかも我々が想像している以上に。

身体的魅力は、ハロー効果を生じさせ、才能や親切さや知性など他の特性についての評価を高める。

②類似性…私たちは、自分に似た人に好意を感じる。そのような人からの要求に対しては、あまり深く考えずにイエスという傾向がある。

③賞賛…好意を高める方法の一つに、賞賛がある。あまり露骨だと反感を買うが、お世辞は一般に好意を高め、承諾を引き出しやすい。

接触…心理学の世界では単純接触効果として知られている。人や事物と接触を繰り返すことで親密性を高めることも、好意を促進する一つの方法である。ただし、不快な環境でなく、快適な環境の中で接触することが条件となる。

⑤連合…広告担当者、政治家、商人は、自分自身や商品を望ましいものと結び付け、連合のプロセスによって、その望ましさを分かち合おうとする。スポーツファンによく見られるように、好ましい事象と自分が結びついていること、好ましくない事象と自分が切り離されていることを他者の目に印象付けようとする。

・ハロー効果とは、ある人が望ましい特徴を一つ持っていることによって、その人に対する他者の見方が大きく影響を受けることをいう。身体的魅力がしばしばそのような特徴として作用する。

美人は有罪になりにくい、など外見の良い人たちが法律的に有利な扱いを受けるというのは今では明らかになっている。教師も、外見の良い子供のほうが、そうでない子供よりも知的であると考えていた。

・自分のことを好きだという情報は、お返しとしての好意と自発的な承諾を生み出す、魔法のような効果を持っている。私たちは、お世辞によって、おめでたいほどだまされやすい存在である。好意的な評価は、それが真実であれ偽りであれ、そのお世辞を言う人に対して等しく好意を生じさせた。

・批判を最初にして、賞賛は後回しにする。最も効果の高い賞賛の方法は、最初はあまり良いことは言わず、後で徐々に賞賛を高めていくのを、何気なく本人に聞かせるというもの。初めから自分についてよい評価を聞かされた場合よりも、ずっと好意を感じるようになった。

・あなたをそのまま映した写真と、左右反転した写真の2枚を用意し、どちらの写真が好きか選ぶとどうなるか。友人は、正しくプリントされた写真を好み、あなたは反転した写真を好む。これは友人もあなたも普段から見慣れた顔に好意を示すからである。友人は世間の人から見た視点の顔に、あなたは鏡で見る左右反転の顔に反応する。

・古代ペルシャ皇帝の勅使は、勝利の知らせを伝えた場合は、英雄として迎えられごちそうでもてなされた。しかし、それが戦いの敗北の知らせであれば、即座に殺されてしまった。「悪いニュースは、その話し手にも伝染する」つまり、人間には不快な情報をもたらす人を嫌う傾向がある。

悪い出来事でもよい出来事でも、それと結び付けられることが、人々が私たちに対しどのような感情を抱くかに影響を与える。

・他のすべての条件が同じなら、人は自分と同じ性別、同じ文化、同じ地方の人を応援する。応援する相手が誰であれ、その相手が自分の代理になる。そしてその人が勝つということは自分が勝つということと同じなのである。彼が証明したいのは、自分が他の人より優っているということなのである。

勝てば「We(俺たち)」、負ければ「They(彼ら)」になる。

・心の深層に「自分は価値が低い人間」との思いがあると、自分自身の業績を高めて名声を得るのではなく、他社の業績との結びつきを形成し、それを強めることで名声を得ようとする。その最も顕著な例は「ステージ・ママ」である。

 

第6章 権威

ミルグラムの実験からもわかるように、正常で心理的に健康な人たちの多くが、権威者から命令されると、自分の意に反して、進んで権威者の指示に従う。

正当な権威者に従うという傾向は、そのような服従が正しいことであるという考えを社会のメンバーに植え付けようとする、体系的な社会化から生じている。

一般的には、本当の権威者は優れた知識と力を持っていることが普通なので、そうした人に従うことは適応的な行為であることが多い。したがって、権威者に対する服従は、一種の短絡的な意思決定として、思考が伴わない形で生じてしまう。

・権威に自動的に従う場合は、その権威のシンボルに反応してしまう傾向がある。

①肩書き ②服装 ③装飾品 この三つのシンボルが効果を発揮する。

いずれの場面でも服従した人は自分の行動に及ぼす権威者の影響力を過小評価する。

・権威者の影響力の有害な効果から身を守るためには、「この権威者は本当に専門家なのか」、「この専門家はどの程度誠実なのか」という二つの質問を発することが重要。

・オーストラリアの大学で行われた実験では、ある男性を、学生、実験助手、講師、助教授、教授として紹介したところ、地位が上がるごとに同じ男性の身長が平均1.5センチずつ高く知覚されることが分かった。「教授」の場合は、「学生」の場合より6センチも高く知覚されたのである。(まさに相手に大きく見せることで威嚇する動物と同じ)

・サンフランシスコで行われた信号が青になってもすぐに発信しない場合、クラクションを鳴らすまでの時間を調べた実験。ベンツなどの高級車の場合と、旧型のエコカーの場合では、明らかに高級車の場合の方が、クラクションを鳴らすまでの時間が長かった。エコカーの場合はほとんどのドライバーがクラクションを鳴らしたのに対し、高級車では約50%のドライバーが前の車が動くまでクラクションを鳴らさなかった。

 

第7章 希少性

・希少性の原理によれば、人は機会を失いかけると、その機会をより価値の高いものとみなす。お店でよく見られる「数量限定」「最終期限」などは、この原理を応用したもの、提供する量や時間に限りがあることを私たちに信じ込ませようとする。

・希少性の原理が効果を上げる理由は二つ。

①手にすることが難しいものは、それだけ貴重なものであることが多いので、入手できる可能性がその物の質を判断する手っ取り早い手がかりとなる。

②手に入りにくくなると、私たちは自由を失うことになる。

・希少性の原理は、物の価値だけでなく情報の評価にも影響する。あるメッセージに近づくことが制限されると、人はそれを手に入れたくなり、また、好ましく思うようになる。また、制限された情報はより説得力がある。メッセージに独占的な情報が含まれていると一層効果的になる。

・希少性の原理をより有効にする条件

①希少なものの価値は、それが新たに希少なものとなったときに一層高まる。すなわち、すでに制限されているよりも、新たに制限されるようになったものの方に価値が置かれる。

②私たちは、他人と争って求めているときに希少性の高いものに最も引きつけられる。

・不鮮明な切手、二度打ちされた硬貨などの「貴重なミス」による欠陥が希少性を高め価値を持つことになる。

心理的リアクタンス理論…自由な選択が制限されたり脅かされると、自由を回復しようとする欲求によって、その自由を以前よりずっと強く欲するようになる。妨害に反発(リアクトル)するのである。

・「ロミオとジュリエット効果」…障壁が置かれたことによって情熱の炎に油が注がれる結果になった。コロラドの140組のカップルについての研究では、親の干渉が強まると愛情も強まり、干渉が弱まると愛情も冷めていた。

・革命の担い手となりやすいのは、よりよい生活の味を幾分か経験した人々である。彼らが経験し当然のものと当てにするようになった経済的・社会的改善が突然手に入らなくなった時に、彼らは以前にもましてそれを欲するようになり武力蜂起することになる。

 

第8章 手っとり早い影響力

・人間の脳の情報処理能力にも限界がある。そこで効率性を求めるため、豊富な情報をもとに時間をかけて行う洗練した意思決定から、より自動的で原始的な、単一の特徴に導かれるタイプの反応へと後退することがある。

・決定を下すとき、状況全体を十分に考慮して分析することが少なくなり、逆に、その状況の中にある特徴のうち、たいていの場合は信頼性の高いたった一つの特徴だけに注意を向けるようになった。

・私たちは通常は、信頼性の高い単一の情報を基礎にして承諾するか否かの決定(すなわち同意したり、信じたり、何かを買うこと)を行っている。

最も信頼性が高い、故に最もよく使われる承諾誘導の引き金が「返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性」である。

2019.4.26「話のおもしろい人の法則」野呂エイシロウ

 オーディオブックで野呂エイシロウさんの「話のおもしろい人の法則」を聞き終えた。2度聞いたが、一言で言うと「相手をよく観察し相手に合わせる」こと、結局は相手への気配り、つまり「喜ばせたい」と思う心が一番大切、ということなのだろう。

 聞きながら「なるほど」と思った部分を、いくつか書き出してみる。

・面白い人は、相手を主語にして話す。つまらない人は自分を主語にして話す。

・次のステップで話す

 ①相手に振る→②大きくリアクションする→③相手の話を拡げる

・自分は1だけしゃべり、相手に3しゃべらす。

・面白い話をするコツは「相手に合わせる」こと。

 まずは相手の話を一旦は肯定する(否定しない)。つまり正解は一つでないと考えることで、相手を否定しない。まずは最初に同意してから自分の意見をしゃべる。

・面白い話には隙がある。つまらない話には隙が無い。

 まずは自分からボケて、相手にツッコんでもらう。ボケが相手の心を開く。

・サプライズが最高のおもてなし。差し入れ、手土産に少しのサプライズ。

こち亀に学ぶ。事実を少し盛って話す。身の回りの話をスケールを大きくして話す。

・大勢に話すときも一対一で話す。

・事実と意見は、明確に区分して話す。

・「転」から離さない。「起承転結」の「起承」が大切。

・ウンチクは、相手に語ってもらってから語る。自分から語るのはNG。

 知ってる話も初めて聞くように聞く。

・結論や意見は求められてから話す。相手は、結論もあなたの意見も求めていないときがある。

・プレゼントやサプライズは惜しみなく与えるもの。口下手を、プレゼントとサプライズで補う。

・「ぶっちゃけ…」「相談があるんですが…」は、相手の心を開くキーワード

・逆に、「ここだけの話…」「絶対内緒で…」はNGワード。この人は秘密を言いふらす奴、と思われるだけ。

・ウンチクを語るハードルを下げるキーワードは、「たまたま知ってるんですが…」「私も最近知ったんですが…」「友人に詳しい奴がいて…」

上から目線は嫌われる。常に下から目線でしゃべるのがコツ。

・謝るときは直接会って謝る。電話やメールに逃げない。

・上手いメールはタイトルにこだわる。下手なメールは本文にこだわる。

・失敗談は格好のネタになる。失敗談で共感を得る。失敗したら話のネタが出来たと喜ぶ。

2019.4.20「スターバックスCEOだった私が社員に贈り続けた31の言葉」岩田松雄(A)

この本は、元スターバックスのCEOだった岩田さんが書かれたもの。今回はオーディオブックで聞いた。

ずいぶん前に読んだ「ミッション~元スターバックスCEOが教える働く理由」が面白かったので、同じ岩田さんの本ということで久しぶりに読んで(聞いて)みた。重なる部分も多かったものの、改めて聞くことで腑に落ちる部分があった。

特に心に刺さった言葉をメモする。

・ミッションとは自分の存在理由。針鼠の概念。三つの円が重なるところ中心にあるものが私たちのミッション。

(1)好きなこと

(2)得意なこと

(3)人のためになること

※これはジェームズ・C・コリンズ著「ビジョナリーカンパニー2」に登場する針鼠の概念を個人に置き換えたもの。

針鼠の概念:企業の戦略は次の三つの円が重なる部分になくてはならない。

 「情熱を持って取り組めるもの」

 「自社が世界一になれる部分」

 「経済的原動力になるもの」

・お客様より従業員が大切。CSの前にES。お客様に直接接するのは従業員、その従業員を大切にする。ESがCSにつながる。

・できる人が教えるのではない。教えるからできる人になる。

・「無駄なことを効率よくやることほど無駄なことはない。」P・F・ドラッカー

・「何をするのか」ではなく、「何故するのか」を伝える。それによって相手に考えてもらうことができる。

・ゴキブリ理論、「1匹いたら30匹いると思え」

ある箇所で気付いた問題は、多くの場合、他の箇所にも存在する。問題がそこに特定の閉じたものなのか、組織や仕組みに内在する問題なのか、見極めることが大事。

・褒めるときのコツ

結果(成果)だけを褒めるのではなく、そこに至るまでの過程(プロセス)を褒める。それが「いつも、あなたを見ている」というメッセージとなる。結果、信頼関係を築くことができる。

・叱るときのコツ

感情を抑え、愛情をもって理性で叱る。「ミスは叱らない。手抜きを叱る。」落合博満

・Just say YES

まずはこの瞬間を肯定する。無理だと思っても、まずはYESと言ってみる。否定から入るのではなく、「やるにはどうすればよいか?」と考えることによって、頭が働きだし知恵が出る。

頭はできない理由を考えるために使うものではない。できる方法を考えるために使う。

・先入観は可能性を制限する。

・遊ぶように楽しく仕事をし、仕事のように真剣に遊ぶ。

 

2019.4.14「人生を面白くする本物の教養」出口治明

今週読み終えた本は「人生を面白くする本物の教養」出口治明著。

出口さんの本は面白くてためになる、ということで今回も以前から気になっていた1冊を読んでみた。

まずは目次

第1章 教養とは何か?
第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない
第3章 出口流・知的生産の方法
第4章 本を読む
第5章 人に会う
第6章 旅に出る
第7章 教養としての時事問題―国内編
第8章 教養としての時事問題―世界のなかの日本編
第9章 英語はあなたの人生を変える
第10章 自分の頭で考える生き方

冒頭にシャネルの創業者ココ・シャネルの言葉が紹介されてる。「私のような大学も出ていない年老いた女でも、道端に咲いている花の名前を一日に一つくらいは覚えることができる。一つ名前を知れば世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ人生は楽しく、生きることは素晴らしい。」これが教養を身につける目的であり、「教養とは生き方そのもの」ということだろう。

以下、心に残る言葉を記す。

第1章 教養とは何か

・「より面白い人生、より楽しい人生を送って、悔いなく生涯を終えるためのツール」それが教養の本質である。

・「知ること」には「嫌いなものを減らす」効果もある。先入観による嫌悪感を減らすことができる。

・教養の本質のもう一つは、「自分の頭で考える」ことにある。知識に加えて、それを素材にして「自分の頭で考える」ことが教養である。

・結論を急いで「分かった」と思おうとするのも間違いのもと。整えられた「答え」で済ませてしまうのは、その方が楽だから。スッキリしているのは多くの情報が削ぎ落とされ形が整えられているからである。しかし多くの場合、削ぎ落とされた部分が肝だったり、形を整える際に、道理ではなく無理が入り込んでいる。

・人間が意欲的、主体的に行動するためには「腑に落ちている」ことが必須である。

・「人間社会とはいびつな欠片が集まって一つの安定状態を形成するもの」。大事なのは「いびつな欠片」を指摘することではなく、全体としての「安定な状態」を把握することである。

 

第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない

・「無知の知古代ギリシャの哲学者ソクラテスが唱えた。私たちはまだまだ知らないことが多い、という自己認識から始めることが大切である。

・グローバルビジネスの現場で重視されているのは「Win・Winの関係」よりも「人間力」である。この人は「面白そうだ」と思ってもらえるかどうか、がポイントとなる。

・面白さの源は、「ボキャブラリー」の豊富さ、言い換えれば「引き出しの数」の多さ。話題が豊富で様々なテーマで会話できる力。

・西洋にはギリシア・ローマの時代以来、リベラルアーツという概念がある。一人前の人間であれば備えておくべき教養のことであり、次の七分野からなる。

算術、幾何、天文学、音楽、文法学、修辞学、論理学

・広く深い知識を持っていても、それだけではダメ。決定的に重要なのは「自分の意見」を持っていること。

・オックスフォード大学の学長の言葉「インドを失った連合王国(イギリス)は今後大きく成長できない国家、いわば没落が運命づけられている国家です。未来のリーダーたちに連合王国の現実を過不足なくしっかり理解してもらいたいのです。そして没落を止めることはできないまでも、そのスピードを緩めることが、いかにチャレンジングで難しい仕事であるかを理解し納得してもらいたいと考えています。」この見事なまでのリアリズムに脱帽。

そしてオックスフォードで最も優秀な学生は外交官を目指し、次に優秀な学生は次の世代を育てる教師を目指す。

・戦後の日本社会は、冷戦構造という大枠の中で、「キャッチアップモデル」「人口増加」「高度成長」という3つのキーワードで説明できる。

・今の日本に定着している労働慣行「青田買いから始まって、終身雇用、年功序列、定年」はすべてワンセットの特異な労働慣行である。

・閉じた世界の中では、何よりも企業に対するロイヤリティ(忠誠心)が高く評価される風土が出来上がる。年功序列は、成果をある程度無視することから、これに拍車をかける。忠誠心を測るのは労働時間、こうして長時間労働という悪しき慣行が蔓延った。

・戦後の日本がいかに特異な社会であったか。このような夢のような社会は、世界史をのどこを振り返ってもほとんど存在しない。

 半世紀以上も戦争がない

 高度成長(平均実質成長率約7%)が40年近く続き

 人口も増え続け

 平均寿命(男性)も50歳そこそこから80歳にまで延びた

・農産物の輸出国第1位はアメリカ。では第2位はというと、ほとんどの人は知らないがネーデルランド(オランダ)である。九州くらいの面積しかない小さな国。ところが農産物の輸出額は9〜10兆円もある。日本の農業にも大きな可能性があることがわかる。

・日本が狭い国だと思っている人はかなり勉強不足。日本の領海の面積は世界第6位。先程の農業に加え海洋資源も日本の大きな余力である。

 

第3章 知的生産の方法

・教養には「知識がある」だけでは不十分で、それに加えて「自分の頭で考える」ことが不可欠である。

・「今さらもう遅い」は単なる言い訳。今が一番若い。過去を変えることはできない。変えられるのは未来のことだけ。

・物事を考えるコツはいくつかある。第1に「タテ」と「ヨコ」で考えること。「タテ」は時間軸であり歴史軸、「ヨコ」は空間軸であり世界軸である。つまり時間軸と空間軸という二つの視点を交えて、二次元で考えるということ。

・第2は、「国語でなく算数で考える」こと。要するに定性的な発想だけでなく、定量的に考えるということである。物事を考える際には、理屈だけでなく常に数字(データ)を参照して考えることが大事である。

これは言い換えると「数字・ファクト・ロジック」の3要素で考えるということ。

・物事の本質は、たいていシンプルなロジックで捉えことができる。人間は本来シンプルな生き物だからだ。逆に言うとシンプルなロジックで理解できないものは、本質を捉えていない可能性がある。そもそも人間はそんなに賢い動物ではない。むしろ単純な動物。そうした人間が作っている社会も、その本質は単純であるはず。であれば人間社会の本質は誰でもシンプルに説明できるはずである。

・偽物を見抜く力も教養の一つ。

・物事の本質をシンプルに捉えるに当たっては、「なにかに例えて考える」つまりアナロジーが有効な場合が多い。一見複雑に見えるものでも、他のものに例えて抽象化すれば、本質を捉えやすくなる。これも「自分の頭で考える」コツの一つ。

・市民の一人一人が社会常識を疑うことによって、社会は健全に発展し、自浄作用が機能する。それが近代国家におけるリテラシーと言われるもの。リテラシーは教養そのものといっても過言ではない。

・機密情報より、物を言うのはのは「考える力」。考える力があれば、普通に入手できる情報であっても、それらを分析するだけで、それまで見えていなかった世界が見えてくる。それが教養の力であり、知の力である。

・とにかく大量の情報に接すると、自ずとその分野に対して造詣が深くなる。

・自分の行動をルール化して判断を省力化する。その都度判断・意思決定するのは大変なこと、あらかじめ基準やルールを決めておき機械的に行動する、言い換えれば習慣化しておく。

 

第4章 本を読む

・教養を培ってくれたのは「本・人・旅」の三つ。本から50%、人から25%、旅から25%

・私の価値観では「面白いかどうか」が常に一番上にある。

・ゴルフとテレビを捨てて、本を読む時間を確保。同感!

・5~10ページ読んで面白いと思ったら最後まで読み、そうでなければその時点で止めてしまう。読んでいて分からないところが出てきたら、腑に落ちるまで何度も同じところを読み返す。著者の主張をしっかりと理解できなければ読書の意義も半減してしまう。

・速読は百害あって一利なし。本の内容が自分の中に血肉化されなければ読書の意味がない。本を読むのにかかる時間は、その人の知識量で決まってくるものであり、単純に目で文字を追う速度とは関係ない。

・最初の1冊目は「点の理解」にとどまる。2冊目を読むと「線の理解」が浮かんでくる。さらに5冊くらい読むと、その分野の全体像が見えてきて、一気に「面の理解」に広がる。1ヶ月くらい時間をかけて10冊くらい読むと、その分野の専門家と話しても内容がわかり、会話が楽しくなってくる。こうして新しい分野を開拓する。

新聞の書評欄は新聞の中で、最もクオリティの高いページである。書評はそれぞれの分野の専門家が署名入りで書いている。バカなことは書けない、笑われてしまう。

アレクサンドロスアラビア語に直せば「イスカンダル」になる。宇宙戦艦ヤマトが目指した宇宙の彼方の国。

 

第5章 人に会う

・本も旅も人。本を読むことは、著者と対話すること、旅は異なる場所に住む人を知ること。

古典を読めば過去の賢人と対話ができる、つまり本はどちらかといえば時間軸。旅は離れた場所に行くことだから空間軸。「タテ」と「ヨコ」の思考法で行けば、本はタテ、旅はヨコになる。

・私たち日本人は、「客」という立場、「接客スタッフ」という立場に過剰適応しているのではないか。立場や役割ではなく、所詮人間は人間という意識を持つべき。

・責務は最小限、面白いことは最大限にしたい。「責務はミニマム、面白いことはマキシマム」が人生の理想。

・人間は本来、次の世代のために生きている動物。子供を育て上げたら前の世代はいつ死んでもいい。人間が老人になっても生きているのは、人生で学んだ様々なことを次の世代に語り伝えることによって、次の世代をより生きやすくするためである。

・北京在住のライター、多田麻美さんの言葉。

「政治体制が違っていても、人の暮らしに必要なものは変わらない。暖かい家と食事、そして心を許せる友だち」

 

第6章 旅に出る

・中国の書店で一番目立つところにおいてある本は、大体が「お金儲けの本」か「歴史の本」。毛沢東の本は、埃をかぶっており、ほとんど買い手がいないことがよく分かる。

・人生の楽しみは喜怒哀楽の総量(絶対値)にある。

 

第7章 教養としての時事問題(国内)

・教育とは本来、人間が生きていく上に必要な武器を与えるもの。一つは「考える力」、もう一つは「生きた実践的な知識」

・現代の選挙システムでは、白票や棄権は有力候補に投票するのと全く同じ結果をもたらす。

チャーチルの言葉「選挙とは、ろくでもない人の中から、現時点で税金を上手に分配できそうな少しでも”ましな人”を選び続ける忍耐そのものを言うのである」「だから民主主義は最低の仕組みである。ただし、王政や貴族政、皇帝政など人類のこれまでの政体を除いては」

つまり政治家に立派な人格を期待してはいけないし、安易に政府や政治家を信頼してはならない、とチャーチルは言っている。

しかし一方で、政治家も政府も市民から離れ敵対して存在しているのではなく、私たち市民が自ら作っていくものである。

・収入は「現金・投資・預金」の3箇所に分けて所有する。これを「財産三分法」という。

公的年金は破綻するか?

結論を言うと、政府が破綻しない限り、公的年金も破綻しない。国債を発行できる限り、公的年金の破綻はありえない。言い換えると公的年金が破綻するのは、国債が発行できなくなる時、ということ。

(日本の税収は約55兆円、それに対して歳出は約96兆円。なぜこれが可能か?国債を発行しているから)

・私たちは金融機関を信用し、金融機関は国を信用するという、信用の入れ子構造の中で生きている。したがって近代国家において最も信用できる金融機関は、最終的には国ということになる。その結果、近代国家では国の格付け以上の格付けを、その国の金融機関は得ることができない。近代国家では、国以上に安全な金融機関は存在し得ない。

・日本の年金問題の根っこは、「小負担・中給付」にある。日本の負担(税+社会保険料)はOECDの平均以下であり、社会保障給付はOECDの平均以上。「負担=給付」でないこのモデルが中長期的に維持できないことは、簡単な算数で明らか。では何故このモデルを採用したのか?それは高度成長で将来の税収が自然に増加すると考えたから。皆保険・皆年金という現行の社会保障制度の骨格が完成したのは1961年のことである。この時代は働く人11人で一人の高齢者を養っていた。また当時の男性の平均寿命は65歳前後。つまり年金をもらっていた期間は約5年であった。しかし現在ではサッカーチームから騎馬戦、さらには肩車になり、高齢者を支える期間も5年から20年に延びた。

・「小負担・中給付」のモデルは成立しない。私たちの選択肢は2つ。

(1)「中給付」を据え置いて、負担を「小」から「中」に増やし、「中負担・中給付」にシフトする。

(2)負担も給付も増やして「大負担・大給付」に移行する。

公的年金問題の本質は以上につきる。世代間の不公平とか、積立方式が好ましいとか言う議論は枝葉末節に過ぎない。

 

・世代間の不公平

「現在の高齢者は支払った社会保険料の4倍程度受給しているが、若者は将来2倍程度しかもらえない、これは不公平ではないか」と言って糾弾する人は、一見正義の味方を装っているが、どうすれば不公平をなくせるかは提案しない。

この世代間の不公平を声高に叫んでいる人たちは、少子高齢化という我が国の人口統計学的な変化を、口当たりのいい世代間の不公平という言葉に置き換えてアジテーションしているに過ぎない。

不公平をなくす方法は原則として二つしかない。

(1)増税して将来の若者の公的年金を増やす

(2)高齢者の平均寿命を65歳に戻して勤労人口を大幅に増やす(つまり大量の移民を受け入れる)

このどちらか。この提言と整合性を持った批判でなければ、聞く価値がない。

・世界的に見れば、世代間の不公平については、人口統計学的な変化以上の不公平は調整すべきだが、人口統計学的な変化に基づく不公平は甘受するというのが大勢。

公的年金の問題は、社会保障全てに共通する。解決方法は次の3つしかない。

(1)負担を上げる(そうすれば給付も増える)

(2)分配が上手なもっといい政府を作る

(3)生産性を上げて(みんなでよく働いて)経済成長する(そうすれば増収になって給付に回せる)

公的年金問題で一番大事な課題は、厚生年金・健康保険の適用拡大の問題。現行制度では、原則週30時間以上の労働が

厚生年金の適用条件となっている。これを一定の収入があるすべての被用者に適用拡大すれば、わが国の公的年金の財政が改善・安定に向かう。これはドイツがシュレーダー改革で採用した考え方。

社会保障と税金について考える。社会保障という給付は全市民が対象である。一方、所得税は働いている人だけが対象、消費税は全市民が負担する税金である。働く人が多かった時代には所得税だけで成立しても、働く人が少なくなった現在では、所得税だけではやりくりできなくなってきた。高齢者も含めて全員で負担するで初めて成り立つ。

・マクロ経済的には国民所得は国民消費に等しい。これを前提にサッチャーは次のように述べた。「我々が汗水たらして働いた結果得られる所得に課税するのは勤労を罰することになる。それよりも個人が選択的に消費をする際に課税するほうがずっと公平である。」

少子化問題こそ日本が抱える根元的、本質的課題である。課題解決の大前提として「子供は社会の宝である」という動物である人間として当たり前の基本認識が、社会の隅々まで徹底することが必要。

・人間は次の世代のために生きている。洋の東西を問わず沈む船から救命ボートに乗り移るときは、子供、女性、男性、老人(高齢者)の順である。子供が最優先で高齢者が最後。それが生命の厳然たる順列である。

・フランスの「シラク三原則」

 フランスの文化や伝統を守るためには、フランス語を母語(マザータング)とする人工を増やさなければならない(文化とはは言語である)という考えのもと

[第Ⅰ原則]赤ちゃんを生んでも経済的に困らない措置をとる(子供が増える度に、手厚い給付を受けられる。経済的解離を社会で埋める)

[第2原則]子供を作った働く女性が困らない環境を整える(最初の1年間の育児休職中はほぼ100%の給与を保証する。つまりコストのかかる0歳児保育は極力親に任せるという考え方)

[第3原則]子育てで最長3年間休職しても、継続して勤務していたものと見なし、元の役職に戻れる。(人事評価も変化しない)

・フランスは子育て支援GDPの約3%を投資している。さらに、法律婚であろうと事実婚であろうと、あるいはシングルであろうと生まれた子供は社会の宝であって、一切差別をしないという大原則が貫かれている。

夫婦別姓いついて

 持統天皇の時代に日本という国号がほぼ確定したので、日本には1,300年以上の歴史がある。1,300年の歴史のなかで夫婦同姓が実施されたのは明治31年(1898年)に民法が成立して以来、わずか120年。あとの期間は、平安時代の妻問婚(別姓)が代表的だが、夫婦同姓ではなかった。

・高齢化対策は「年齢フリー原則」がキモ

「平均寿命ー健康寿命=介護」であることから、超高齢化社会対策の基軸は健康寿命を延ばすことにある。健康寿命を伸ばすベストの方法は「働くこと」、であるとすれば真っ先にすることは定年制の廃止。定年制を廃止すれば、年功序列型賃金はたちどころに同一労働同一賃金に移行し、労働流動化も実現する。そうすれば公的年金の支給年齢を70歳に上げても問題は生じないだろう。

・既に日本には800万戸以上の空き家がある。不動産が資産形成に役立ったのは、人口増加と高度成長が前提であった。

・社会問題や時事問題の本質を捉えるために必要な二つの着眼点。

(1)「動機」、原因といってもよい。この問題は何が動機で起こっているのか、そのメカニズムを見極めることが肝要

(2)「本音」と「建前」を見分けること。現代社会では、何事にも大義名分が必要であり、表に出てくるのは建前ばかり。しかし、建前の裏には必ず本音が潜んでいる

 

第8章 教養としての時事問題(世界の中の日本編)

・どんな事例であれ、すべて100%メリットという話はない。必ずメリットとデメリットが混在している。

・ヨーロッパでは「固有の領土」という概念は存在しない。領土問題についての人間の知恵は、つまるところ「かつては戦争して取り合っていたけれども、今はできるだけ戦争をしないようにしている」という一点に集約される。国境紛争は話し合いで解決するのが基本的プロとコールであり、互いの主張がどうしても噛み合わない場合は、当面実効支配を是認しようというのが暗黙の了解である。知恵が出るまで時間をかけて待つというスタンス。

・「ナショナリズムとは、劣等感と不義を結んだ愛国心である」歴史学者ルカーチの言葉。

・抽象的な観念として思い描かれる中国と、個別具体的な中国人の間には大きなギャップがある。

・エネルギー問題は日本のアキレス腱。石炭を掘るのは非常に危険な作業で、今でも年間数百人が命を落としている。原発事故よりを多くの人が継続的に犠牲になっている。

地球温暖化は、人類が直面している諸課題の中でも「幹中の幹」である。

 

第9章 英語はあなたの人生を変える

・事実上、英語が世界共通語(リンガ・フランカ)になっている。もはや英語は避けて通れない。

 

第10章 自分の頭で考える生き方

・1年は何時間あるか?24×365=8,760時間である。そのうち仕事をしているのは、残業を入れても2,000時間程度。私たちが仕事に費やしている時間は、8,760分の2,000であるから2割ちょっとしかない。

2〜3割の仕事の時間は、7〜8割の時間を確保するための手段である。人生にとって重要なのは2〜3割の仕事(ワーク)ではなく、7〜8割の生活(ライフ)に決まっている。

・私たちは「職場の一員」である前に「社会の一員」である。職場に過剰適応してはならない。

・職場内での序列が人間のランキングだと勘違いしている人がいる。企業の役職は、それぞれの役割を示しているに過ぎない。企業のトップは「機能」、社長や会長になったからといって、別にその人の人格が向上したとか人間的価値が増大したわけではない。出世とは、極論すれば、単に「機能」が変わっただけ。

・自分のやりたいことは、人生のステージによって様々に変わるし、変わってもいい。

・相性は現実の職場では、極めて重要である。

・人間が物事を考えるときの言語は「マザータング」(母語)である。日本語の文章をちゃんと書けることは、物事を考えるための最低条件である。

・少数精鋭とは、「精鋭を少数集める」のではなく「少数だから精鋭になる」

・情報を共有する会議は30分、何かを決める会議は1時間が基本。

・会議室を少なくすれば、会議が良くなる。

・本当に大事だと思っている部署には、自然に足が向く。

 

2019.4.7「知的戦闘力を高める独学の技法」山口周

今週読み終えた本「知的戦闘力を高める独学の技法」、著者は山口周さん、MBAを取得せずに独学で外資コンサルタントになった方らしい。この本から学ぶ点は多く独学に対する考え方も大きく変わったので、少し丁寧に概要をまとめてみたい。

まずは目次を示す。

序章 知的戦闘力をどう上げるか? …知的生産を最大化する独学のメカニズム

第1章 戦う武器をどう集めるか? …限られた時間で自分の価値を高める“戦略”

第2章 生産性の高いインプットの技法 …ゴミを食べずにアウトプットを極大化する“インプット”

第3章 知識を使える武器に変える …本質を掴み生きた知恵に変換する“抽象化・構造化”

第4章 創造性を高める知的生産システム …知的ストックの貯蔵法・活用法“ストック”

第5章 なぜ教養が「知の武器」になるのか? …戦闘力を高めるリベラルアーツの11ジャンルと99冊

最初に独学を

「戦略」→「インプット」→「抽象化・構造化」→「ストック」

の4ステップに分けて体系化しており画期的な技法、この考え方は目から鱗で非常に腹落ちした。

1 戦略

 どのようなテーマで知的戦闘力を高めるかを決める

2 インプット

 本やその他の情報ソースから情報を効果的にインプットする

3 抽象化・構造化

 知識を抽象化したり、他のものと組み合わせたりして独自の視点を持つ

4 ストック

 獲得した知識や洞察をセットで保存し、自由に引き出せるように整理する

今まで2のインプット、特に読書こそが独学と無意識に思い込んでいた自分に気付くことができ、この本に感謝している。以降、各ステップにおいてポイントとなる記載をまとめてみたい。

◼️戦略

・独学する対象を「ジャンル」ではなく「テーマ」で決める。ジャンルで選ぶと過去に誰かが体系化した知識の枠組みに沿って学ぶことになるので、自分ならではの洞察や示唆が生まれにくい。

・テーマとジャンルをクロスオーバーさせる。

・さらに大切なのは「自分が心の底からワクワクできるテーマかどうか」

・戦略は細かく決めすぎてはならない。偶然の連鎖を大事にすることも大切。戦略は粗い方向性だけ決めればよい。

・独学とは、「何を学ばないか」を決めること。思い付きで時間を浪費するのは、戦力の逐次分散投入と同じ、日本はこれで戦争に負けた。

◼️インプット

・「ガーベージイン・ガーベージアウト」GIGO 

 これは「ゴミを入れてもゴミしか生まれない」ということ。IT業界で使われる用語である。出力の質は入力の質で決まるという経験則。

・インプットと言うと読書を考えてしまうが、テレビ、ネット、映画、音楽など自分の五感を通じて得るもの全てがインプットとなる。情報が溢れる現在においては、要らない情報を捨てることの方が大事。

・読書の目的は4つ。

 1 仕事に必要な知識を得る

 2 専門領域を深める

 3 教養を深める

 4 娯楽

・いい本を選別することは難しい。名著、古典と呼ばれる本は長い期間の評価に耐えているだけにハズレ(間違い)がない。

 多くの本を読むのは、深く鋭く読むべき本を見つけるためである。大量の本を浅く流し読みしながら、深く読むべき本を探している。「濫読の時期がなかった人は大成しない」とは山口瞳の「続 礼儀作法入門」の言葉。

・共感できる情報ばかり集めているとバカになる。知識が極端になり独善的になり、同質化を起こす。

意見の対立がないと、質の高い意思決定は出来ない。知的水準が高くても、同じような人が集まれば意思決定の質は低くなる。

・自分を知るには、好きなものより嫌いなものを分析する方が簡単。大切なものを否定されるから怒りが起こる。

・情報には2種類ある。

 インフォメーション:いわゆる情報

 インテリジェンス:洞察や意思決定できる情報

・インプットする情報を選択することは大切だが、一方で「セレンディピティ」や「プリコラージュ」という目的外の偶然の出会いも大事である。

(参考)プリコラージュとは

 あり合わせの道具や材料で物を作ること。転じて持ち合わせているもので、現状を切り抜けること。日曜大工。英語のDIY(Do it yourself)にあたる。

レヴィーストロースは、人間の本源的な思考は、最初から完全な設計図を前提とするエンジニアの思考のような「知」ではなく、プリコラージュといわれる、あり合わせの素材を使い本来とは別の目的や用途のために流用する思考方法だと考えた。

・偶然は強い意思がもたらす必然である。

・インプットで大事なことは、メモをとること。これは、先日アップした前田さんの「メモの魔力」に詳しい。

◼️抽象化・構造化

 これも「メモの魔力」にあるのと同様、情報を使える戦力、武器にするためには必須の過程である。

・カギとなるのは、アナロジーを見つける力。アナロジーとは、複雑な物事を説明する際に、同じ特徴を持ったより身近な物事に例えて説明すること。類推とも言う。

・独学の目的は、新しい「知」ではなく、新しい「問い」を得ること。

 つまり洞察に繋がる「問い」を作る力が大切になる。問いの高い人とは、簡単に分かった気にならず、本当に分かったのかと自問し、矛盾や意味の通らない点はないかを確かめる。

・質問は好奇心から生まれる。また、知っているから質問が出てくる。知らなければ質問すら生まれない。

アインシュタインが友人であるソロビーヌに宛て書いた手紙。「自分の思考プロセス」の概念図

f:id:sisters_papa:20190412153022j:image

*「独学の技法」から引用

アブダクション

 起こった事象をもっともうまく説明できる仮説を作るための推論法のこと。仮説形成とも訳される。

 アメリカの哲学者パースがアリストテレスの論理学をもとに提唱し、帰納法演繹法と並ぶ第3の推論法として、新たな科学的発見に不可欠なものとして主張した。

◼️ストック

・本の読み方は「アンダーラインを引く→選別→転記」の3ステップ。

・忘却を前提(インプットされた情報の9割は短期間に忘れてしまう)とした、ストックが大事。つまり転記により、いつでも検索でき取り出せる状態にすること。

 

知的戦闘力とは、「洞察力」と「創造性」

・洞察力とは、「現象の背後で何が起きているのか?」「このあと、どのようなことが起こり得るのか?」という2つの問いに答えを出すこと。

・創造性とは、スティーブ・ジョブスの次の言葉が本質を突いている。

「創造性とは何かを繋げること。自分の経験から得られた知見を繋ぎ合わせて、それを新しいモノゴトに統合させる。」

・創造性にはレバレッジがきく。10個の知識を持っている人と100個の知識を持っている人では、組み合わせによって得られるアイデアの数はそれぞれ45個と4950個になる。つまり知識の量が10倍になれば生み出されるアイデアの数は100倍以上になる。

リベラルアーツを学ぶ理由として著者は5つ上げている。

 ①イノベーションを起こす武器となる

 ②キャリアを守る武器となる

 ③コミュニケーションの武器となる

 ④領域横断の武器となる

 ⑤世界を変える武器となる

・著者が勧めるリベラルアーツ11分野。

歴史、経済学、哲学、経営学、心理学、音楽、脳科学、文学、詩、宗教、自然科学

・歴史を学ぶとは、表面的な事実だけでなく、内部のメカニズムを考えること。そうすれば次に起こすべき行動の指針が得られる。

・経済学を学べば、市場のルールや価値の本質を見抜けるようになる。

・哲学を学べば、疑う力、否定と肯定を使い分ける力が身につく。考えることと悩むことは違うことに気づく。

・心理学によって、人間の不合理さや不条理性を理解する。

・音楽を学ぶことで、全体を直感的に把握する力が身につく。

脳科学により人間が起こすエラーパターンを学ぶ。人間の脳にはバグがある。

・詩により、表現力とりわけ比喩表現の強化が図れる。

・宗教は、人間のグループによる思考、行動様式を理解する手助けになる。