2018.12.24 「イノベーションのジレンマ」

今週読んだ本は次のとおり

(1)「絶滅の人類史」 更科 功

(2)「イノベーションのジレンマ」クレイトン・クリステンセン

 

今日は、(2)の感想を追記したいと思います。

イノベーションのジレンマ」、さすがに長い年月を経ても読み継がれているだけあって内容の濃い本でした。この本に書いてある結論としては、次の企業がジレンマに陥る5つの原則に端的にあらわされています。

1 企業は顧客と投資家に資源を依存している

 つまり企業は顕在化している株主や顧客のニーズを満たすことに多くの資源を投じる、という宿命を持っているということ

2 小規模な市場では、大企業の成長ニーズを解決できない

 大企業の成長戦略として取組むには市場規模が小さすぎるということ

3 存在しない市場は分析できない

 企業は説明責任があるため、市場分析を行い見込みがあることを説明しなければなりません。しかし破壊的イノベーションにはそもそも市場が存在しないのです。

4 組織の能力は無能力の決定的要因になる

 いわゆる成功体験、今までに成功している価値基準や業務プロセスは持続的イノベーションに最適化されています。個人の能力は柔軟ですが、組織の能力には柔軟性がありません。

5 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

 持続的イノベーションに注力しているうちに、いつか技術・性能が顧客が求めている水準を超えてしまう。そのため技術的には低水準で低価格の分野に空白が生じる、ということ。

この5原則にすべてが凝縮されているとは思うものの、そのほか心に残っている言葉を上げてみます。

・どの会社、どの組織にも資源・プロセス・価値基準の要因があり、持続的技術と破壊的技術とのかかわりを考えるうえでこの枠組みは重要となる。組織において経営者、マネージャが日常的に下す判断の一つ一つがその組織のプロセスを形作り、価値基準を植え付け、その組織特有の文化となっていく。

・組織の能力は、労働力・原材料・エネルギー・資金・情報・技術などの入力を「価値の向上」という出力に変えるプロセスと、組織の経営者や従業員が優先事項を決める時の価値基準によって決まる。人材の能力と違って組織の能力、つまりプロセスや価値基準に柔軟性はない。

・個人に仕事をうまくやる能力があれば、そのような人が所属する組織にも成功する能力があると考えがちである。しかし必ずしもそうとは言えないのだ。組織で働く人材やその他の資源に関係なく、組織自体の能力というものがあるからだ。

・確実に成功するためには、目的に合った人材の選定、訓練、動機付けだけでなく、目的に合った組織の選択、構築、準備に優れた手腕を発揮する必要がある。

 ・競争の基盤の一般的な変化パターン 「機能」⇒「信頼性」⇒「利便性」⇒「価格」

・優良な企業、優れた経営者には次の特性がある。この優れた経営者による合理的な判断が破壊的技術に対して失敗をもたらすことになる。

①顧客の声に耳を傾ける ②求められる技術の提供に積極的に投資する ③利益率の向上を目指す ④小さな市場より大きな市場を目標とする

・優れた企業は「実行のための計画」を立て、多くの場合には成功する。しかし稀に訪れる破壊的イノベーションに対応するためには「試みて発見する」という「発見のための計画」が必要となる。

・組織にできることは、資源、プロセス、価値基準の3要因によって決まる。