2019.1.13 「AI vs 教科書が読めない子供たち」「大人の語彙力が使える順で身に付く本」「爆発的進化論」

今週の読書は次の3冊

1 「AI vs 教科書が読めない子供たち」 新井紀子(A)

2 「大人の語彙力が使える順で身につく本」 吉田裕子(A)

3 「爆発的進化論」 更科功

 まずは、1の感想から

数学者、そして「東ロボくん」プロジェクトの主宰者である新井先生が、AIの本質について論理的に解説している本です。AIについては、とかくセンセーショナルに言われることが多いですが、この本ではAIの仕組みから、その可能性と限界を冷静に語っています。特に印象に残った言葉をいくつかご紹介します。

・真の意味でのAIとは、「人間の一般的な知能と同等レベルの知能」という意味であり、シンギュラリティとは、「真の意味でのAIが自分自身より能力の高いAIを作り出すようになる地点」という意味である。その意味でのシンギュラリティはやって来ない。

・AIがコンピュータ上で実現されるソフトウェアである限り、人間の知的活動のすべてが数式で表現できなければ、AIが人間にとって代わることはありません。

・コンピュータのアルゴリズムや速さの改善の問題ではなく、大元である数学の限界なのです。

 ・数学の言葉は、”論理”、”確率”、”統計”の三つしかない。論理でAIが作れないことは見えてきた。

・確率、統計に基づいてAIを作ろうという一つの技術がディープラーニング。しかし、確率、統計の仕組みには限界がある。

・AIに代替できないのは、文章の意味を理解する「読解力」。

・多くの子供たちが、教科書を読んで理解する読解力を持たないことが問題である。

2の本は、日ごろ何気なく使っている言葉が本来持っている意味など、意外と知らないことも多く感心しながら聞き終えました。audiobookで聞くと漢字がよくわからず、結局紙の本も買いました。この本は通して読むというより、何か文章を書く時の参考にできればいいと思います。

3の本は、先日読んで面白かった「絶滅の人類史」を書かれた更科先生の本です。これも期待を裏切らない面白い本でした。「口」、「骨」、「眼」などの生物の器官に焦点を当て、それがどのように進化してきたか、独特の語り口で面白く学ぶことができます。特に面白く読んだところをいくつかピックアップしてみます。

・ウイルスはただの掘っ立て小屋、という章では、生物の特徴として「代謝(エネルギーや物質の流れ)」、「複製」、「細胞膜」の三つを上げ、ウイルスはDNAつまり設計図しかもっていない(掘っ立て小屋に住んでいる)ため生物ではない、と説明している。

・「眼」の項では、結論として「眼で見る」ことが一番いい、とのこと。光を使えば小さなものまで見ることができる、のがその理由。音波を使って耳で見たり、弱い電気を使って見たりする動物もいるが、波長の短い光を使うのが最も優れている、と結論付けている。

・「脚」の項では、次のことが強調されている。四肢動物に共通の特徴として、「上腕に一本、前腕に二本、手首にいくつかの小さな骨、そして指の骨」という配置がある。つまり、両生類、爬虫類、鳥類、そして私たち哺乳類に共通である。このことから、私たち四肢動物は魚類から進化した。私たちはハイギョから進化したのである。

・最後の章「命」では、セントラルドグマについて書かれている。これは、「DNA➡️RNA➡️タンパク質」という遺伝子の流れはすべての生物に共通している特徴であるということ。

・進化においては、今の私たちが最終の形ではないという。私たちは、まだ進化の最中に位置している。