2019.2.3「EQこころの知能指数」「もう迷わなくなる最良の選択」

今週読んだ本は、次の2冊。

1 「EQ こころの知能指数」 ダニエル・ゴールマン

2 「もう迷わなくなる最良の選択」 アルボムッレ・スマナサーラ(A)

1は、1995年にアメリカで発売されベストセラーとなった本です。私は文庫版で読みました。ゴールマンが言う「社会に出て成功するのに必要な能力はIQが2割、EQが8割」というのは、私の実感として素直に納得できました。

EQの基本は「自分の感情を自覚し、激情をコントロールする能力、失敗してもあきらめない意志力、他人の気持ちを思いやる能力、すなわち共感力」なんとも当たり前のことのように感じると同時に、これこそ本当に大切なことと思います。

この本ではまず、脳の進化から「感じる知性」と「考える知性」の違いを説明し、「感じる知性」すなわち感情が、私たちの行動にいかに大きな影響力を持つかを述べています。いくつか印象に残る部分を書き出してみます。

・脳の最も原始的な部分である脳幹の上にやがて情動を支配する部分(脳幹の周囲を縁取る形状から「大脳辺縁系」と呼ぶ)が発生し、さらに何百万年という時間を経て、その上に思考する脳すなわち大脳新皮質が発達した。

・人間の大脳にある「扁桃核」はアーモンドの形をした神経核で、脳幹の上、大脳辺縁系の底辺にあたる部分に左右ひとつずつある。

目や耳から入ってきた感覚信号はまず視床に届き、そこからたった一つのシナプス扁桃核に到達する。次に視床は同じ信号を大脳新皮質に送る。

そのため扁桃核は、大脳新皮質が何層もの神経回路を通して情報を吟味し反応を開始するより早く反応できることになる。

・私たちは何かを知覚するとき、最初の千分の2、3秒で対象を無意識に理解するだけでなく、それに対する好悪の判断までしてしまう。これは、扁桃核に蓄えられた情動の記憶のせいだ。海馬が事実を記憶するのに対し、扁桃核は事実に付随する情動を記憶する。「私たちが前を歩く人間が自分の上司だと認識できるのは、海馬の働き。同時に嫌な奴に出会っちゃったなあと思うのは、扁桃核の働き。」

・頭と心、あるいは思考と情動が対立するにせよ協調するにせよ、大事なのは扁桃核(および大脳辺縁系の組織)と大脳新皮質の関係だ。

理性的な判断を下すために感情は不可欠な要素である。感情によって大まかな方向性を与えられ、そこから論理的能力を発揮できる。

情動の脳は理性の脳の思考を助けたり邪魔したりしながら私たちの下す判断を方向付けている。私たちの中には二種類の知性、「考える知性」と「感じる知性」がある。感じる知性がなければ考える知性は十分に機能できない。大脳辺縁系大脳新皮質(あるいは扁桃核前頭前野)は、互いに補いあって精神生活を支えている。この協調関係がうまくいくとEQもIQも向上する。

旧来のパラダイムは、感情の影響力から解放された理性を理想とみなしてきたが、新しいパラダイムは情と知の調和が大切だとしている。

・EQに関する基本的な定義は次の5つ。

①自分自身の情動を知る・・・情動の自己認識

②感情を制御する・・・感情を適切な状態に制御しておく能力

③自分を動機づける・・・目標達成に向かって自分の気持ちを奮い立たせる能力

④他人の感情を認識する・・・共感能力

⑤人間関係をうまく処理する・・・他人の感情をうまく受け止める能力 

・喫煙の死亡リスク係数は1.6だが、社会的孤独の死亡リスクはそれを上回る2.0である。これは一人暮らしといことではなく、社会から切り離されて誰も頼るものがいないという主観的感覚である。

・体で感じた事実や感情を言葉にしてみることで、記憶に対する大脳新皮質のコントロールが強まる。

・人間は情動の噴出が「いつ」起こるかはコントロールできないが、情動の噴出が「どれくらいの時間」継続するかをコントロールすることはできる。

 

2は、スリランカの僧であるアルボムッレ・スマナサーラさんの語りを記述したものですが、仏教の本ではありません。私たちが生きるということは常に選択する、ということですが、その選択を後悔しないためのコツを教えてくれる本です。ここで語られていることは大きく次の3つにまとめられると感じました。

・人は選択しなかった選択肢のメリットを考えるから後悔する。選択したら選択したことが全て。選択しなかった選択肢のことは考えてはならない。

・感情で判断するから後悔する。感情で判断してはならない、理性で判断する。

・人は「自分が、自分が」という自我が前に出ることで苦しむ。私たちは社会というジグゾーパズルの一つのピースである。小さなピースではあるが、その一つがなければパズルは完成しない。