2019.3.31「メモの魔力」前田裕二

SHOWROOM社長の前田さんが書いてベストセラーとなっている「メモの魔力」。読み終えてから随分時間が経ってしまったが、書かれていることの要約と感想をまとめる。

まず、この本で一番心に残ったのは、「終章」で語られている前田さんの”メモ術の原体験”である。大切な人を喜ばせるため、あるいは自分が愛されるための方策として「メモを取る」ことに全力を傾けた経験が語られ、妙に感動すると共に納得させられた。そんな前田流メモ術のキモを以下にまとめてみたい。

・メモを取るうえで最も大切なことは、

「ファクト⇒抽象化⇒転用」の思考フローにしたがって左から右へメモが流れるということ。これが日常のすべてをアイデアに変える最強のフレームワーク

・メモを「第2の脳」として使う。過去の事実(ファクト)を思い出すという余計なことに思考の時間を割かない。

→ 頭(脳)は覚えるためにあるのではない、考えるためにある。

・メモによって鍛えられる5つのスキル

①アイデアを生み出すスキル(知的生産性の向上)

②情報を「素通り」しなくなる(情報を受取る力の向上)

③相手のより深い話を聞き出す(傾聴力の向上)

④話の骨組みが分かる(構造化力の向上)

⑤あいまいな感覚や概念を言葉にする(言語化力の向上)

特に③により特別な敬意が相手に伝わることで相手も自分に対して敬意を抱いてくれる(返報性の原理)

また、④と⑤により深いコミュニケーションが成立する。言語化することは考えること、考えることは言語化すること。この相互作用によって頭が整理される。

・人は具体的な話を好む。なぜなら具体的な話は頭を使わず楽だから。だからこそ具体から本質を抽出して「つまりそういうこと(So What)」と抽象的な命題を発見することの価値が高い。

・頭は具体から抽象を、抽象から具体を導くために使う。「抽象化⇔具体化」の力が頭の良さ。

・メモの本質は、単に記録することではなく後から行う「振り返り」にある。振り返りによりファクトから抽象化し転用することがメモの本質。

・「抽象化」こそが最強の武器である。

誰かが抽象化したルールをただ具体的に使いこなすのは単純労働者の思考プロセス。具体の中から自分でルールを見つけ独自の視点で新しい発見や創造を行うのが、発明者的思考プロセス。

・抽象化のための思考法には3つある。

①WHAT型:現象を言語化する

②HOW型:特徴を抽出する

③WHY型:抽象化して物事の本質を知る

・抽象化とは端的に言うと「具体的な事象の本質を考える」ということ。具体的な事象から「他に転用可能な」要素、つまり気付き、背景、法則、特徴などを抽出する。その抽象化したものをさらに別の具体的なものに転用する。「具体⇒抽象⇒転用」という思考プロセスが大切。

・単に抽象化するだけではただのゲームに過ぎない。転用する先に具体的な課題がなくてはならない。解きたい具体的課題がなければ、そもそも抽象化する意味がないしモチベーションも湧かない。まずは前提として「解くべき課題の明確化」が必要。

・メモを取るには言語化のスキルが大前提。WHAT型の抽象化で言語化能力を高める。自分が紡いだ「生きた言葉」で語れるようになれば人の共感を得ることができる。

言語化に必要な二つの条件

①抽象化能力(特にアナロジー力)

一見関係ないようなものに共通点を見つけ結びつける能力

②抽象的な概念に名前を付ける能力

人は概念に名前をつけないと思考ができない(考えるとは書くこと、つまり言葉にすること)

世阿弥の言葉「我見」と「離見」

能楽論を書いた「花鏡」より。悪い演者は自分から見る目(我見)のみ、良い演者は離れたところから自分を客観視する目(離見)を持つ。

・「タコわさ理論」:経験していないこと、知らないことは「やりたい」と思うことさえできない。子供は誰でも「カレー」と「ハンバーグ」が好き、「タコわさ」など食べたことがない。「やりたい」ことを見つけるためにも、経験と知識は欠かせないということ。

・まずは自分を知ることが大切。そのためにメモを活用する。「自分の意識に目を向ける(具体化)⇒Whyで深堀する(抽象化)」これにより、ブレない人生の軸を見出し、自分の人生のアンカー(錨)とする。

・「流れ星を見た瞬間に願いを唱えると夢が叶う」が意味するところは、瞬間でも言葉に出るくらい強い想いを持っているから夢が叶う、ということ。思いは強いほど、行動への反映率が上がる。

・夢を実現したいのであれば「思う」だけではだめ、逃げずに言語化し、さらには映像化(目に見える状態)にすること。

・目標を達成するためにモチベーションを上げる二つの方法

①逆算(トップダウン型)

目標(ゴール)を明確に決めて、そこから”逆算”して日々の行動を決める。

②熱中(ボトムアップ型)

目の前の面白そうなことに飛びつく(目の前のことに”熱中”する)ことで日々の行動が決まっていく。その結果大きく前進する。

・目標が複数ある場合に取るべき道は二つ

①マージする(一つにまとめる)

選択と集中(一つに絞り他を捨てる)

・目標(ゴール)設定のコツ:SMART

S:Specific 具体的である

M:Measurable 測定可能である

A:Achievable 達成(到達)可能である

R:Related 関連性がある(価値観が合う)

T:Time 時間の制約がある

特に大切なのはS(具体的)、M(測定可能)、T(時間制約)の3つ。

・ストーリーを語るときの3つのポイント

①できるだけ「具体的」に話す。情景が浮かぶようにエピソードを話す。人は具体的な情報のほうが記憶に残る。

②「間」を恐れずに使いこなす。「次の言葉を忘れた」と思わすくらいに間を置く。つまり、聞く人に考える時間を与える。

③できるだけ「双方向、インタラクティブ」に話す。実際に会話できなくても質問を投げた後、少し間を置くことで「心のインタラクティブ」を実施する。

また、聞き手の不安を取り除くためには、いきなり具体的なエピソードに入るのでなく、話の着地点(伝えたいことのエッセンス、抽象度の高い命題)を提示してから具体的エピソードを語ることも大事。

・成長のためには「習慣に勝る武器はない」。良い意味で習慣の奴隷になること。

・ライフチャートを描くことで人生を水平に捉える。変曲点に注目する。なぜ上がったのか?なぜ下がったのか?これにより自分が大切にしている価値観が分かる。

・メモは「創造の機会損失」を減らすツールである。「明日どんな情報が大切になるか」は誰にもわからない。だからメモに残す。

・人生とは、所詮「時間をどう使ったか」の結果でしかない。したがって「時間をどう使うか」と考えた時、自分の人生を幸せにする選択をすることが大切になる。

・メモとは生き方そのものである。メモによって

 世界を知り、アイデアが生まれる。

 自分を知り、人生のコンパスを持つ。

 夢を持ち、熱が生まれる。

その熱が自分を動かし、人を動かし、結果、人生や世界をも動かす。