2019.6.29「一流の頭脳」アンダース・ハンセン
「一流の頭脳」アンダース・ハンセン著をオーディオブックで聞いた。2度続けて聞いてみて「なるほど」と思ったところを記してみたい。
まず著者のアンダース・ハンセンは、スウェーデンにあるノーベル賞(生理学・医学賞)を決めている機関でもある「カロリンスカ研究所」で研究し、今は精神科医である。また、2000件以上の医学記事を発表した世界的研究者でもある。
そんな彼が本書で伝えていることは、一言で言えば「脳の力を最大化するためには運動、特に有酸素運動が最も有効である」ということに尽きる。
少し順を追ってポイントを押さえてみる。
いつものように目次から
第1章 自分を変える「ブレイン・シフト」
第2章 脳から「ストレス」を取り払う
第3章 カロリンスカ式「集中力」戦略
第4章 「やる気」の最新科学
第5章 「記憶力」を極限まで高める
第6章 頭のなかから「アイデア」を取り出す
第7章 「学力」を伸ばす
第8章 「健康」な頭脳
第9章 超・一流の頭脳
第10章 「一流の頭脳」マニュアル
・定期的な運動によりストレスを減少させることができる。
ストレスは、ストレス要因が偏桃体に刺激を与え、ストレスホルモンであるコルチゾールを分泌し、結果ストレスが発生する。
運動していると、このコルチゾールの分泌量が少ししか上がらなくなる。つまり体を動かすことでストレスに対する抵抗力が高まる。
・偏桃体が感情のアクセルとすれば、この偏桃体を抑えるブレーキ役は海馬と前頭葉になる。運動はこの海馬と前頭葉を強化する。定期的な運動を長期間続けていれば海馬も前頭葉も物理的に成長さえする。
・人が集中しているときは、ドーパミンが発生している。運動することでドーパミンやアドレナリンが放出され数時間は増加状態を維持する。つまり集中力が運動によって高まる。
・多くの研究によれば、一番効果的な運動はランニングということになるが、もちろんウォーキングにも効果がある。心拍数を一定以上上げる運動であれば効果があるということ。ある論文によると、1日20~30分ウォーキングするだけでうつ病を予防できることがわかった。
・BDNF(brain derived neurotrophic factor:脳由来神経栄養因子)とは、脳が生成するたんぱく質で、脳細胞の新生や記憶力、全般的な健康など、脳の様々な働きを促進する作用がある。
つまりBDNFは、脳細胞が傷ついたり死んだりしないよう保護し、新たに生まれる細胞を助け、初期段階にある細胞の生存や成長を促すという役目も果たしている。
また、細胞間の連携を強化し、記憶力を高める。さらに脳の可塑性を高め、細胞の老化を遅らせるなど、まさに脳の救世主といっていい働きを行う。
・運動はこのBDNFを増やす、もっとも有効な方法である。特に有酸素運動が効果的。
運動ほど脳細胞の新生を促すために有効な方法はない。運動すればBDNFが生成され、そのBDNFが脳細胞の新生を促進する。
・記憶力を最大化するには、運動しながら記憶するのが最も適している。運動と暗記を同時にすれば効果がある理由は明らかになっていないが、ウォーキングや軽いジョギングをしながら暗記すると最も効果的だ。
・創造性を増やすためにも、有効なのはやはり運動である。20~30分のジョギングの効果が大きい。
・20年前までは、脳細胞は新生されることなく死んでいくだけ、と考えられていた。しかし今は、多くの脳細胞は可塑性があり、新生されることがわかってきている。
そしてこの脳細胞の新生を促す最も効果的な方法は、薬でも脳パズルでもなく運動であることは多くの研究によって明らかになっている。
・あらゆる研究が示すものは、「運動すれば脳が活性化され頭が良くなる。認知症にもなりにくい」という結論である。しかも激しく厳しい運動は必要ない。定期的な有酸素運動、つまり週2回以上の30~45分程度のジョギングやウォーキングで十分に効果がある、ということ。できれば心拍数をあげるランニングが好ましいということではあるが。
・著者も言っているが、もしこれが「新薬発見」による効果であれば、世界中で大騒ぎになるだろう。しかし、運動という「誰でも簡単に出来、お金もかからない手段」によって効果が得られるが故に、誰も凄いことと思わないしマスコミも注目しない。言い換えると「運動」では商売にならないのである。
したがって、今日も多額の研究費が、認知症予防などの新薬開発につぎ込まれている。