2020.8.15 「内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法」スーザン・ケイン

先日、YouTubeでスーザン・ケインのTEDを見てすぐにAmazonで購入した「内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法」を読み終えた。(DaiGoも推薦)

今回のコロナ騒動で自分が「内向型人間」であることを再認識したタイミングでもあり、興味深く読んだ。

けっしてそんなに若くはないが、この内向的な性格を上手く活かしながら、もっと人生や仕事を楽しめないか、人間として成長できないか、考えてみた。

まず、この本の目次を見てみる。

 

序章 これほど違う二つの性格
1章 ”誰からも好かれる人”が生まれた理由
2章 ”カリスマ的リーダーシップ”という神話
3章 ”共同作業”が創造性を殺す
4章 性格は運命づけられているのか?
5章 生まれつきと自由意志
6章 なぜ”クール”が過大評価されるのか?
7章 報酬志向と脅威志向が運命を分ける
8章 あえて外向的にふるまうのなら
終章 不思議の国へようこそ

 

序章は、まず1955年12月1日のローザ・パークスの話から始まる。有名なキング牧師の言葉に代表される黒人差別法撤廃に向けきっかけとなった出来事である。このローザ・パークスは典型的な内気で物静かな内向型の女性であったらしい。

著者は「なぜ”隠れ内向型”が多いのか?」と問いかけ、以下のように述べている。

・私たちは、外向型の人間を理想とする価値観の中で暮らしている。(中略)個性を尊重すると言いながら、一つの特定のタイプを称賛しがちだ。その対象は「自分の存在を誇示する」のを心地よく感じるタイプなのだ。

・外向型を理想とする社会で暮らす内向型の人々は、男性優位世界の女性のようなもので、自分がどんな人間かを決める核となる性質ゆえに過小評価されてしまう。

 

そもそも内向型・外向型とは何なのか?

この本では、「内向型チェックリスト」として20項目の質問が用意されていた。早速やってみたが17から18項目は見事に当てはまる。やっぱり典型的な内向型のようだ。

`人の性格を内向型、外向型と最初に区分したのは有名な心理学者カール・ユング。彼は内向型、外向型をそれぞれ次のように定義した。

[内向型]

・自己の内部の思考や感情に心惹かれる

・周囲で起きる出来事の意味を考える

・一人になることでエネルギーを充電する

[外向型]

・外部の人々や活動に心惹かれる

・周囲で起きる出来事に自分から飛び込んでいく

・十分に社会で活動しないと充電が必要になる

また、第4章で詳しく述べられているが、発達心理学者ジェーローム・ケーガン教授の長年の研究によると、外部からの刺激に対する反応性の違いが、内向型と外向型を分けるとしている。スーザン・ケイン流に言い換えれば、内向型と外向型とでは、うまく機能するために必要な外部からの刺激のレベルが異なる。

内向型:高反応→低刺激が「ちょうどいい」と感じる

 親しい友人や家族とワインをほどほどに飲む、クロスワードパズルを解く、読書をする、など

外向型:低反応→高刺激を楽しむ

 初対面の人と会う、急斜面でスキーをする、ボリュームを上げて音楽を聴く、など

ケーガン教授は、生後4か月の赤ん坊500人を集め、聞きなれない録音の声を聞かせたり、見慣れないぬいぐるみを見せたり、アルコール綿棒を鼻に近づけるなど、いくつかの新しい体験(未知の体験)を与え、その反応を観察した。

その結果、全体の20%は元気よく泣いて手足をばたつかせた。40%は静かで落ち着いたままでさほど大きな動きを見せなかった。残りの40%は「高反応」と「低反応」の中間だった。

この赤ん坊たちを大人になるまで継続して観察した結果、高反応だった子供は内向型と言われる大人になり、低反応だった子供は外向型になった。

 これを脳科学的に見ると、

外向型の人 →大脳辺縁系(すなわち本能に関わる部分)を主に使っており、刺激に対しすぐ反応することが多くなる。報酬依存度が高くドーパミンが出まっくている状態

内向型の人 →大脳辺縁系よりも扁桃体前頭葉が優位に働く扁桃体は恐怖や恐れを司っており未知のものに出会ったとき私たちの足を止め考える時間を作り出す。前頭葉は意志力をコントロールする部分であり、冷静な判断と自己コントロールを可能とする。

扁桃体の反応が大きいほど、心拍数が多く、瞳孔が広がり、声帯が緊張し、唾液中のコルチゾール値が高くなる)

つまり内向型の人は、外向型に比べ自制心が高く、リスクの高い博打を避けじっくり考えて行動する。外向型のドーパミンの代わりに、セロトニンを多く分泌することで平静を保ち落ち着いて行動する。

 

内向型・外向型は変えられるか「ランの花仮説」「輪ゴム理論」「スイートスポット」

一卵性双生児の研究によると、内向型か外向型かの40~50%は遺伝で決まる。そして特定の性質を持つ人は、その性質を強化する人生体験を求める傾向がある。つまり極めて低反応な子供は、小さいころから危険を招きやすいので、成長すると大きな危険にも動じなくなる。

デヴィッド・ドブズが論文で主張した「ランの花」仮説によれば、高反応な子供たちは、より強く周囲の環境に影響される。大半の子供たちはタンポポの花のようにどんな環境でもたくましく成長する。だが高反応タイプの子供は「ランの花」のような存在である。ランの花は枯れやすいが、適切な状況の下では強く育ち、見事な花を咲かせる

逆境に弱いと考えるのではなく、良くも悪くも影響されやすいと考える

カール・シュワルツ博士は、ケーガンが観察してきた子供たちを大人になってからも追跡調査し、次のような結論を得た。

・成長しても高反応・低反応の痕跡は消えなかった。

これは、重要な事実を示唆している。つまり、性格を変えることはできるがそれには限度がある。年月を経ても生まれ持った気質は私たちに影響をもたらす

スーザン・ケインはこのことを次のようにまとめている。

・どんなに社交術を磨いてもビルゲイツはビルクリントンにはなれないし、どんなに長くコンピュータの前に座っても、ビルクリントンビルゲイツにはなれない。これは「輪ゴム理論」と呼べるかもしれない。私たちは輪ゴムのようなもので、自分自身を伸ばすことができるが、それには限度があるのだ。

また、5章では様々な研究・実験により内向型と外向型で最適な刺激のレベルが明確になりつつある、と述べている。たとえば、ゲーム中に聞こえてくる最適な雑音レベルで言うと、外向型の人は平均72デシベル(騒々しい喫茶店)、内向型の人は平均55デシベル(静かな図書館)だった。これらの結果から、スーザン・ケインは「スイートスポット」と呼ぶ最適な環境を探すことの大切さを次のように説いている。

・内向性と外向性はそれぞれ特定のレベルの刺激を好むのだと理解すれば、自分の性格が好むレベルに自分自身を置くようにすることができる。つまり、自分にとって覚醒の活性が高すぎも低すぎもしない、退屈も不安も感じない状況心理学者が言うところの「最適な覚醒レベル」~私はこれを「スイートスポット」と呼んでいる~を知っていれば、今よりもっとエネルギッシュで生き生きとした人生が送れる。

 

内向型はリーダーに向いていないのか?

集団の力学に関する研究によると、次のような現実がある。

・私たちはしゃべる人の方が物静かな人よりも頭がいいと認識する

・私たちはよくしゃべる人をリーダーとみなす

・私たちには最初に行動を起こした人の後を追う傾向がある

その一方でピーター・ドラッカーは次のように書いている。

・この50年間に出会った極めて有能なリーダに共通する唯一の特質は、彼らが備えていないものだった。すなわち彼らは「カリスマ的才能」をまったく、あるいは少ししか持っておらず、それを利用することもなかった

また、ジム・コリンズは「ビジョナリー・カンパニー2」の中で、優れた大企業は彼が言うところの”第五水準の指導者”に率いられている、と書いている。

すなわち、派手なパフォーマンスやカリスマ性でなく「極端な謙虚さ」と「職業人としての意志の強さ」を持つCEO(指導者)である。彼らを表現する言葉は次のような傾向があった。

物静か、控えめ、無口、内気、寛大、温厚、でしゃばらない、良識的

アダム・グラント教授は、状況により内向型のリーダが適切な場合と、外向型のリーダが求められる場合があるにもかかわらず、今までの調査ではその点を明確に区別していなかった、と述べている。

彼の仮設によれば、次のように区分される。

外向型リーダー:部下が受動的なタイプであるとき集団のパフォーマンスを向上

内向型リーダー:部下がイニシアティブを取る能動的なタイプであるときに効果的

また、内向型リーダーの優れた例(彼が出会った中で最高のリーダの一人)として、ある空軍大佐の特質について紹介している。

・落ち着いた口調で話し、大げさな抑揚を付けず表情も淡々としている

・自分の意見を主張したり発言の機会を独占したりするよりも、他人の意見を聴いて情報を収集することに関心を持っている

・最終的な決定権が自分にあることを明確にしながらも、人の意見をきちんと検討し、有意義な意見に適切な補足を与えた

・手柄を自分のものにしたり賞賛されることに関心を待たない

・部下を適材適所に配置して最大限に力を発揮させた。つまり、他のリーダーたちならば自分のために取っておくような、最も興味深く有意義で重要な仕事を他人に任せた

 

”共同作業”と”単独作業”

心理学者のアンダース・エリクソンが行った有名な調査で意外な事実が判明した。ベルリン音楽アカデミーの協力を得てバイオリン専攻の学生を三つのグループに分けた。

① 世界的ソリストになる実力のある学生

② すぐれている評価の学生

演奏家になれずバイオリン教師を目指す学生

三つのグループとも音楽活動にかける時間は週に50時間以上。課題の練習にかける時間もほぼ同じだった。ところが、上位二つのグループと第三のグループでは個人練習にあてる時間が大きく異なっていた。

・上位のグループ  週に24.3時間 一日当たり3.5時間

・第三位のグループ 週に9.3時間 一日当たり1.3時間

第1のグループの学生は個人練習を最も重要な活動と評価していた。個人練習が本当の練習であり、集団でのセッションは「楽しみ」だと表現する。

ブレインストーミングが失敗する理由は、通常3つあるといわれる。

社会的手抜き 他人任せで努力しない人が出てくる

生産妨害 発言できるのは一人ずつ、他の人は黙って待っているだけ

評価懸念 他者の前では自分が評価されるのではと不安になる

集団心理の危険性については、心理学者ソロモン・アッシュの研究で広く知られているが、集団による「同調」圧力の強さは想像以上である。

集団によるプレッシャーは不快なだけでなく、問題をどう見るかの視点を実際に変化させる。人は集団からどれほど強く影響されているか、全く意識することなく影響されるのである。

 

内向型・外向型は人間だけじゃない?

 敏感すぎる人(内向的な人)は、進化の厳しい選別をどのようにして生き残ってきたのか?おしなべて大胆で積極的な人が栄えるとしたら、なぜ敏感すぎる人は淘汰されなかったのか?

この質問について、心理学者のエイレン・アローン博士は、敏感さはそれ自体が選択されたのではなく、それに伴う「慎重な思慮深さ」が選択された、と考えている。本書では次のように記載されている。

・「敏感な」あるいは「高反応な」人は、行動する前にじっくり観察して戦略を練る。危険や失敗やエネルギーの無駄遣いを避ける。これは「本命に賭ける」あるいは「転ばぬ先の杖」という戦略である。

・対照的に、逆のタイプの積極的な戦略は、完全な情報がなくても迅速に行動することで、リスクを伴う。つまり、「早起きは三文の得」であり「チャンスは二度ない」から、「伸るか反るかの賭けに出る」のだ。

最近の研究によると、人間だけでなく他の動物たちも、「慎重に様子を見るタイプ」と「行動あるのみタイプ」に分かれることがわかってきた。動物界の100種以上が該当するらしい。

・約20%が「エンジンのかかりの遅い」タイプであり、約80%が周囲の状況にあまり注意を払わずに危険を冒して行動する「速い」タイプだ。

・これはいわゆる進化のトレードオフ理論であり、すなわち、よいことばかりの特質も悪いことばかりの特質もなく、生息環境しだいで生き残るための重要事項様々に変化するということだ。

・唯一最高の性格というものはない。むしろ、性格の多様性が自然選択によって守られた

・外向型は繁殖力が強いが、防御力が弱く、各個体の寿命が短い。内向型は繁殖力が弱いが、自己保存のための様々な手段を備えている。

 

報酬志向と脅威志向(外向型がアクセル、内向型がブレーキ)

証券市場で株取引をするケースを考える。

ジャニス・ドーン博士によると、外向型の顧客は報酬に非常に敏感であり、対照的に内向型の顧客は警告信号に注意を払う。そして、この違いは脳の構造から説明できるらしい。

大脳辺縁系はもっとも原始的な哺乳類にも共通するもので、感情や本能を司っているが、ドーンはそれを「古い脳」と呼んでいる。大脳辺縁系には、扁桃体や脳の「喜びの中枢」と呼ばれる側坐核などが含まれている

・古い脳の、報酬を求め快楽を愛する部分が、大事な老後資金をカジノのチップのように扱わせた。

・私たちの脳には、大脳辺縁系よりも数百万年もあとに進化した、新皮質と呼ばれる「新しい脳」がある。新しい脳は、思考や計画、言語、意思決定など、人間を人間たらしめる機能を司っている。

・新しい脳と古い脳は連係して働くが、それは必ずしもうまく行かない。両者が衝突した場合、私たちはより強い信号を送っている方の言いなりになる。

報酬に対する敏感さは外向型の単なる特徴の一つではなく、外向型を外向型たらしめていると考えている科学者もいる。言い換えれば

・権力、セックス、お金に至るまで様々な報酬を求める傾向によって外向型は性格づけられている。彼らは経済的にも政治的にも、そして快楽の点でも、内向型よりも大きな野心を持っている。

 ・彼らが持つ社交性は報酬に敏感だからこその機能ということになる。人づきあいが本質的に心地よいから、外向型は社交的に振る舞う。

・カギとなるのは肯定的な感情。外向型は内向型よりも多くの喜びを体験する傾向がある。喜びの感情は「たとえば、価値のある何かを追い求めて、手に入れることに反応して活性化する。手に入れると予想すると興奮が生じ、いざ手に入ると、喜びがわく」と心理学者のダニエル・ネトルが著書で述べている。

・外向型は「熱狂」と呼ばれる感情を頻繁に抱く。・・・熱狂をもたらすのは、眼窩前頭皮質側坐核扁桃体を含む「報酬系」と呼ばれる脳内の構造ネットワークの強力な活性化だ。

外向型は内向型よりもドーパミンの活性が強い

・収入やBMIなどすべてに関連する重大なライフ・スキルである「楽しみを後にとっておく」という点でも、内向型は外向型より優れている。

好調な時にブレーキを踏むのが内向型

内向型は「調べること」に、外向型は「反応すること」に適応している。

・内向型は報酬を重要視せず・・・興奮するとすぐにブレーキを踏んで、もしかしたら重要かもしれない関連事項について考える。内向型は、興奮を感じると警戒を強める

内向型はマルチタスクが苦手

・内向型が外向型より賢いということではない。IQテストの結果からして両者の知性は同等である。

・課題数が多い場合、特に時間や社会的プレッシャーや複数の処理を同時にこなす必要があると、外向型の方が結果がいい。

・持続性はあまり目立たない。天才が1%の才能と99%の努力の賜物ならば、私たちの文化はその1%をもてはやす傾向がある。

ギャンブルをする前にエロティックな写真を見せられた人は、そうでない人に比べリスクを負いやすい。つまり、これからしようとすることに全く関係ない報酬であっても、ドーパミンを分泌させて報酬系を興奮させ、より軽率な行動を引き起こす、ということ。

・フローを経験するカギとなるのは、行動がもたらす報酬ではなく、その行動自体を目的とすることだ。

 

 

内向型の人間があえて外向的にふるまう(自由特性理論)

自由特性理論とは

・私たちは特定の性格特性(内向性のような)を持って生まれるが、自分にとって非常に重要な事柄、すなわち「コア・パーソナル・プロジェクト」に従事するとき、その特性の枠を超えてふるまえるのであり、実際にふるまっている

・つまり内向型の人は、自分が重視する仕事や、愛情を感じている人々、高く評価している事物のためならば、外向型のようにふるまえる

・ただ長期間にわたって「偽の」ペルソナを身にまとうというのは、多くの人にとって不愉快なことだろう。

セルフモニタリング

・外向型のふるまいが特に上手な内向型は、「セルフモニタリング」と呼ばれる特質の得点が高いことがわかった。セルフモニタリングがうまい人は自分の言動や感情や思考を観察して、周囲の状況から必要性に応じて行動をコントロールできる。

・セルフモニタリング度が高い者からすれば、低い者は頑固で世渡りが下手に見える。セルフモニタリング度が低い者からすれば、高い者は日和見主義で信頼できないと見える。

偽外向型でいることの害

・自由特性理論の戦略はうまく使えば効果的だが、やり過ぎれば悲惨。

・心から大切に思っている仕事を進めるために外向的にふるまっているのであり、この仕事が終われば本物の自分に戻ってゆっくりできる、と考えること

コア・パーソナル・プロジェクトを見つけるための三つの重要なステップ

(1)子供のころに大好きだったことを思い出してみる

(2)自分がどんな仕事に興味があるか考えてみる

(3)自分が何をうらやましいと感じるか注意してみる

回復のための場所を確保する

たとえコア・パーソナル・プロジェクトのためとはいえ、自分の性格に背いて行動するには限界があるし、あまり長期間は続かない。自分の性格に背いて行動する最大の秘訣は、できるだけ本当の自分でいられる場所「回復のための場所」をできるだけたくさん作ることである。

 

最後に

・人づきあいは内向型も含めてみんなを幸せにするけれど、内向型は量よりも質を大切にする。

人生の秘訣は、適正な明かりの中に自分を置くことだ。

・外見は真実ではない。