2019.4.1「知識創造の方法論〜ナレッジワーカの作法」野中郁次郎、紺野登

「知識創造の方法論〜ナレッジワーカの作法」 野中郁次郎、紺野登

私の読書を変えた本でもある「失敗の本質」の著者、野中郁次郎さんの書かれた本である。オーディオブックで購入し、やっと聞き終えた。私にとってはかなり難しい内容で知らない言葉も多く、何度も聞き返し知らない言葉はググるなど読み終える(聞き終える)まで2週間ほど費やした。

さらには、より深く理解するため、同じコンビで書かれた「知識経営のすすめ〜ナレッジマネジメントとその時代」を購入し読み始めたところである。

まずは、この本の全体像を理解するため目次を示す。

ーーーーー<目次>ーーーーーーー

序 知の方法を身にまとう

 1 新たな経営の知

 2 ナレッジワーカの時代

第1部 知の方法論の原点

 1 哲学にみる知識創造の知

 2 知識創造論で見た知の型

 3 知識創造プロセスと弁証法のダイナミズム

第2部 社会科学にみる知識創造の知

 1 科学の知の方法論の意味合いとその変遷

 2 社会学の知のアプローチ:構造、行為、意味、統合

 3 潜在的カニズムの発見へ

 4 新たな経営の知に向けて:総合の知

第3部 「コンセプト」の方法論

 1 コンセプトとは何か

 2 「観察」の方法論:アイデアの源泉としての経験

 3 「概念化」の方法論:意味の発見と形成

 4 「モデル化(理論化)」の方法論

 5 「実践化」の方法論

 6 日常的行為へ

第4部 経営と知の方法

 1 企業の知の型(組織的知識創造)

 2 ナレッジ・リーダシップ

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まず、この本を読むにあたって基礎知識として必要なのがSECIモデル(セキモデル)。これは、野中郁次郎氏が、個人における知を「暗黙知」と「形式知」に分類し、その知をどのように循環させ、企業に根付かせていくかのプロセスをSECIモデルとして概念化したもの。個人の知(暗黙知)は、「共同化」、「表出化」、「連結化」、「内面化」という4つの変換プロセスを経ることで、集団や組織の共有の知となるという考え方である。

「共同化」Socializaition  暗黙知 ⇒ 暗黙知

 経験を共有することで、暗黙知を共有(人から人へ移転)すること

「表出化」Externalization 暗黙知 ⇒ 形式知

 暗黙知がメタファー、アナロジー、コンセプト、仮説、モデルなどの形を取りながら言葉で表現され形式知となり集団で共有されること

「連結化」Combination  形式知 ⇒ 形式知

 形式知を組合せたり、再配置することで新たな形式知を生み出すこと

「内面化」Internalization 形式知 ⇒ 暗黙知

 形式知暗黙知へ身体化すること。言い換えると形式知を自らのスキルやノウハウとして体得すること。形式化されたナレッジが新たな個人へ内面化することで、その個人と組織の知的資産となる。

 

以下に、ランダムではあるがポイントと思われる部分、あるいは心に残った文章を記載する。

・「ナレッジワーカーは間接部門ではない。知的価値を生み出す直接部門である。」日本で知的な仕事と言うと、間接部門の仕事であり、直接部門は物を作るところと考えがちだが、既に世界は変わっている。知的な活動こそが「価値=利益」を生む直接部門の仕事である。

・日本の部長課長が考えていることは、せいぜいA4用紙2~3枚程度の内容に過ぎない。日本の管理職に求められているのは、段取り力や部下をまとめる能力。概念とか思考は邪魔になると考えられてきた。

しかし、グローバルな世界では1冊の本に相当する深い思考力、教養がないと対等に会話すらできない。

 ・デュルケムの自殺論:自殺は個人的問題ではなく、社会的集合現象と捉える。

 「プロテスタントカトリックより自殺率が高い」

 「独身者は既婚者より自殺率が高い」

 「子供のない家庭はある家庭より自殺率が高い」

という統計データから次のことが言える。

「社会的結合力の強弱が、個人の不安の強弱に影響する」その結果が自殺という事象として表面化する。

人々の行動を規定している規則やルールには意識的なものと無意識によるものの二通りある。自殺は個人の自発的意思によるものでではないと考え、自殺を可能な限り自殺率という統計データだけを用いて分析することで、真の原因が見えてくる。

・よい物語(ストーリーテリング)の特徴

①明確に定義された1つのテーマ

②よく練られた筋書き、スタイル

③生き生きとした絵を見るような叙述

④微笑ましい音やリズム

⑤人格化されていること

物語は、太古の昔から存在する優れた「知識伝達の方法論」。

暗黙知の持つ豊かさを失わずに伝達できる。つまり、自分の経験である暗黙知をすべて形式知化してしまうことなしに「場」や「状況」を含めて伝える方法である。

・聞き手に伝わる物語 4つのポイント

①聞き手と結びつきがある

 聞き手に関わりのあるアイデア、または共感できる主人公の設定

②奇妙さがある(一般論や常識論は面白くない)

 聞き手の期待や気持ちを揺さぶるストーリー

③理解しやすい

 感情や感覚に訴えるように語る

④ハッピーエンドである

 何より大切なのがこれ、物語はハッピーエンディングしなくてはならない。

サントリーの「ボス」とホンダの「オデッセイ」、これらのコンセプト作りから学ぶことは多い。

 コンセプトを、¨表コンセプト¨と¨裏コンセプト¨に分け定義する。コンセプト創造のためには、頭で考えるだけでなく「体験」することが大事。ヘビーユーザを徹底的に知ることでアイデアの原型が生まれる。

(表コンセプト → 裏コンセプト → 真コンセプト)

・コンセプト創造のステップ

1 観察(アイデア

 観察、対話、経験を通して意図を理解し、アイデアの原型を得る

2 概念化(コンセプト)

 アブダクション的思考により意味を発見し、背後のメカニズムを把握する

3 モデル化(理論)

 変数へのブレークダウンから、因果関係を発見し理論化する

4 実践化

 「物語」の知により知識としての表現や移転を行う

・コンセプトを結果に見立て、その原因を探るというアプローチも有効である。コンセプトを構成する各要素間の因果関係を明らかにして、コンセプトの背後にある要素を変数として表現する。

商品コンセプトは、複数の変数の組み合わせで象徴的な意味を表すパターンが多い。

(例)「○○と△△の働きで体の自然なバランスを生み出す」「△△と○○の調和が生み出す街の賑わい」

 ・「守破離」は、いわば日本的な弁証法的思考法である。松下電器パナソニック)、ソニーには、コヒーレンス(首尾一貫性)とともに「破離」が求められている。

本田宗一郎の言葉「夢は持っているか。計画は立てているか。試しているか。」

・これからの時代に必要なのは「組織のビジョンや理念を一部の人間で作り社員で共有する」という営みではなく、「知の共有と創造が行われる場を作り、その場を活用する」こと(=知識経営)である。

知識経営とは、つまるところリーダシップの問題である。

 

2019.3.31「メモの魔力」前田裕二

SHOWROOM社長の前田さんが書いてベストセラーとなっている「メモの魔力」。読み終えてから随分時間が経ってしまったが、書かれていることの要約と感想をまとめる。

まず、この本で一番心に残ったのは、「終章」で語られている前田さんの”メモ術の原体験”である。大切な人を喜ばせるため、あるいは自分が愛されるための方策として「メモを取る」ことに全力を傾けた経験が語られ、妙に感動すると共に納得させられた。そんな前田流メモ術のキモを以下にまとめてみたい。

・メモを取るうえで最も大切なことは、

「ファクト⇒抽象化⇒転用」の思考フローにしたがって左から右へメモが流れるということ。これが日常のすべてをアイデアに変える最強のフレームワーク

・メモを「第2の脳」として使う。過去の事実(ファクト)を思い出すという余計なことに思考の時間を割かない。

→ 頭(脳)は覚えるためにあるのではない、考えるためにある。

・メモによって鍛えられる5つのスキル

①アイデアを生み出すスキル(知的生産性の向上)

②情報を「素通り」しなくなる(情報を受取る力の向上)

③相手のより深い話を聞き出す(傾聴力の向上)

④話の骨組みが分かる(構造化力の向上)

⑤あいまいな感覚や概念を言葉にする(言語化力の向上)

特に③により特別な敬意が相手に伝わることで相手も自分に対して敬意を抱いてくれる(返報性の原理)

また、④と⑤により深いコミュニケーションが成立する。言語化することは考えること、考えることは言語化すること。この相互作用によって頭が整理される。

・人は具体的な話を好む。なぜなら具体的な話は頭を使わず楽だから。だからこそ具体から本質を抽出して「つまりそういうこと(So What)」と抽象的な命題を発見することの価値が高い。

・頭は具体から抽象を、抽象から具体を導くために使う。「抽象化⇔具体化」の力が頭の良さ。

・メモの本質は、単に記録することではなく後から行う「振り返り」にある。振り返りによりファクトから抽象化し転用することがメモの本質。

・「抽象化」こそが最強の武器である。

誰かが抽象化したルールをただ具体的に使いこなすのは単純労働者の思考プロセス。具体の中から自分でルールを見つけ独自の視点で新しい発見や創造を行うのが、発明者的思考プロセス。

・抽象化のための思考法には3つある。

①WHAT型:現象を言語化する

②HOW型:特徴を抽出する

③WHY型:抽象化して物事の本質を知る

・抽象化とは端的に言うと「具体的な事象の本質を考える」ということ。具体的な事象から「他に転用可能な」要素、つまり気付き、背景、法則、特徴などを抽出する。その抽象化したものをさらに別の具体的なものに転用する。「具体⇒抽象⇒転用」という思考プロセスが大切。

・単に抽象化するだけではただのゲームに過ぎない。転用する先に具体的な課題がなくてはならない。解きたい具体的課題がなければ、そもそも抽象化する意味がないしモチベーションも湧かない。まずは前提として「解くべき課題の明確化」が必要。

・メモを取るには言語化のスキルが大前提。WHAT型の抽象化で言語化能力を高める。自分が紡いだ「生きた言葉」で語れるようになれば人の共感を得ることができる。

言語化に必要な二つの条件

①抽象化能力(特にアナロジー力)

一見関係ないようなものに共通点を見つけ結びつける能力

②抽象的な概念に名前を付ける能力

人は概念に名前をつけないと思考ができない(考えるとは書くこと、つまり言葉にすること)

世阿弥の言葉「我見」と「離見」

能楽論を書いた「花鏡」より。悪い演者は自分から見る目(我見)のみ、良い演者は離れたところから自分を客観視する目(離見)を持つ。

・「タコわさ理論」:経験していないこと、知らないことは「やりたい」と思うことさえできない。子供は誰でも「カレー」と「ハンバーグ」が好き、「タコわさ」など食べたことがない。「やりたい」ことを見つけるためにも、経験と知識は欠かせないということ。

・まずは自分を知ることが大切。そのためにメモを活用する。「自分の意識に目を向ける(具体化)⇒Whyで深堀する(抽象化)」これにより、ブレない人生の軸を見出し、自分の人生のアンカー(錨)とする。

・「流れ星を見た瞬間に願いを唱えると夢が叶う」が意味するところは、瞬間でも言葉に出るくらい強い想いを持っているから夢が叶う、ということ。思いは強いほど、行動への反映率が上がる。

・夢を実現したいのであれば「思う」だけではだめ、逃げずに言語化し、さらには映像化(目に見える状態)にすること。

・目標を達成するためにモチベーションを上げる二つの方法

①逆算(トップダウン型)

目標(ゴール)を明確に決めて、そこから”逆算”して日々の行動を決める。

②熱中(ボトムアップ型)

目の前の面白そうなことに飛びつく(目の前のことに”熱中”する)ことで日々の行動が決まっていく。その結果大きく前進する。

・目標が複数ある場合に取るべき道は二つ

①マージする(一つにまとめる)

選択と集中(一つに絞り他を捨てる)

・目標(ゴール)設定のコツ:SMART

S:Specific 具体的である

M:Measurable 測定可能である

A:Achievable 達成(到達)可能である

R:Related 関連性がある(価値観が合う)

T:Time 時間の制約がある

特に大切なのはS(具体的)、M(測定可能)、T(時間制約)の3つ。

・ストーリーを語るときの3つのポイント

①できるだけ「具体的」に話す。情景が浮かぶようにエピソードを話す。人は具体的な情報のほうが記憶に残る。

②「間」を恐れずに使いこなす。「次の言葉を忘れた」と思わすくらいに間を置く。つまり、聞く人に考える時間を与える。

③できるだけ「双方向、インタラクティブ」に話す。実際に会話できなくても質問を投げた後、少し間を置くことで「心のインタラクティブ」を実施する。

また、聞き手の不安を取り除くためには、いきなり具体的なエピソードに入るのでなく、話の着地点(伝えたいことのエッセンス、抽象度の高い命題)を提示してから具体的エピソードを語ることも大事。

・成長のためには「習慣に勝る武器はない」。良い意味で習慣の奴隷になること。

・ライフチャートを描くことで人生を水平に捉える。変曲点に注目する。なぜ上がったのか?なぜ下がったのか?これにより自分が大切にしている価値観が分かる。

・メモは「創造の機会損失」を減らすツールである。「明日どんな情報が大切になるか」は誰にもわからない。だからメモに残す。

・人生とは、所詮「時間をどう使ったか」の結果でしかない。したがって「時間をどう使うか」と考えた時、自分の人生を幸せにする選択をすることが大切になる。

・メモとは生き方そのものである。メモによって

 世界を知り、アイデアが生まれる。

 自分を知り、人生のコンパスを持つ。

 夢を持ち、熱が生まれる。

その熱が自分を動かし、人を動かし、結果、人生や世界をも動かす。

 

2019.3.10「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」川上和人

今週読み終えた本は次の2冊。

1「自分の頭で考え動く部下の育て方」篠原信(A)

2「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」川上和人

続いて2について。

「鳥は恐竜である」に留まらず、さらに「恐竜は鳥である」とまで著者は言いきる。この本はよくある恐竜本ではなく、まさに鳥類学者(鳥の専門家)が書いた恐竜の本である。

「第3章 無謀にも鳥から恐竜を考える」では、鳥の生態をもとに恐竜の外観の色、巣の作り方、夜行性か昼行性か、などを妄想(?)豊かに語っている。鳥についての知識はもちろん、恐竜に対する知識も半端なく、最新の研究成果も盛り込みながら、しかし自由な発想で面白おかしく恐竜への愛を綴っている。

読んでいて「なるほど」と新しく気付かされたことを、いくつかメモしておく。

・恐竜が二足歩行を実現することができたのは、それ以前の爬虫類と異なる脚の付き方を進化させたからである。ワニやトカゲでは、体の横から張り出すように脚がついている。一方、恐竜の脚は、体から下向きについている。

これによって恐竜は巨大化できた。さらに移動距離を大幅に広げることもできることとなった。

・「グロージャーの法則」南に行くほど生物の色が濃くなるというパターンのこと。「ベルグマンの法則」北に住む個体ほど、体が大きくなるという法則。

・進化は「節約的」に考えることがルールとなっている。つまり色々な種類で同じ進化が何度も独立して起こったと考えるより、共通の祖先が一度だけ進化したと考えるほうが、より確からしいと言う考え方である。

・恐竜は立派な尾を持っている。この尾はなんのために進化したのか?

脊椎動物はもともと水中で進化してきた。魚類が生まれ両生類が出現した。魚類時代の尾は間違いなく推進力を得るための運動器官として発達してきた。しかし陸上では、カエルを見れば一目瞭然。オタマジャクシ時代にはあった尾が、カエル時代にはなくなる。空気は水に比べて抵抗が小さいため、尾で推進力を生み出すことは難しく、元来の目的で維持する必要がなくなったと考えられる。では何故、恐竜には大きな尾があるのか。尾は単なる重りではなく、走るための巨大な筋肉の格納庫であり、その支えとなっている。また、巨大な上半身を支えるバランサーというのも尾の重要な機能の一つだろう。

・鳥のくちばしは、歯のある口の代わりに生まれたものではない。手の代用品として生まれたというべきだ。つまり「くちばし=手+口」なのである。

・味覚には、甘味、旨味、酸味、塩味、苦味の基本要素がある。甘味はエネルギーになる糖の味、旨味は体を作るアミノ酸の味、塩味は必須元素のミネラルの味、苦味は毒の味、酸味は未熟や腐敗といった鮮度を示す味。このとおり味の要素には、すべて生きていくための意味がある。

・種子が未熟な間は、果肉に酸味や苦味がある。種子が成熟し種子散布される準備が整うと、果肉が甘く美味しくなり芳香を放ち散布者を誘う。種子は果肉という対価を払い、動物というタクシーに乗って移動する。

・今から6,600万年前の白亜紀末、恐竜時代が突然終わりを告げた。この白亜紀末には、恐竜だけでなく被子植物アンモナイト翼竜、首長竜など様々な分類群で絶滅が起こっている。原因として考えられているのは、メキシコのユカタン半島にあるクレータを生み出した巨大小天体衝突である。直径200キロにも及ぶ巨大クレーターで、チチュルブ・クレーターと呼ばれている。

衝突による衝撃は、大地震を起こし、衝突による噴出物は地球全体での気温上昇をもたらし、地表面温度は260度に達したと言われる。

 

福井駅前にある動く恐竜のモニュメントに驚いたのは、3年前。仕事で訪れた福井駅の真ん前に、声をあげ動く巨大な恐竜がいた。

男の子はみんな恐竜が大好きだが、私も小さい頃、恐竜にあこがれ図鑑を見たものだ。その後ジェラシックパークなどの映画で、実際に闊歩する恐竜に興奮したものである。その映画にも匹敵するようなリアルな恐竜が駅前にいたのである。本当にびっくりした。

この本は、そんな恐竜への興味をさらに駆り立てる。子供の頃同様、またまた恐竜に関する本を読んでみたくなった。

 

2019.3.10「自分の頭で考えて動く部下の育て方」篠原信

今週読み終えた本は次の2冊。

1「自分の頭で考え動く部下の育て方」篠原信(A)

2「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」川上和人

まずは1について。

「優秀な人のもとでは部下が育たない、何故か?」そんな疑問に答えてくれる本。優秀な人ほど「自分でやったほうが早い病」にかかってしまい、結果部下を指示待ち人間に仕立て上げてしまいます。この本は「上司1年生の教科書」と副題がついているように初めて部下を持つ上司が注意しなくてはならないことを中心に書いています。しかし私のように長年上司を経験した者にとっても改めて考えさせられることの多い内容でした。まずは三国志に登場する諸葛孔明のエピソードをもとに、上司がいかにして考えない部下を作っているか、を述べています。この例えはすっと腹落ちしました。

孔明のエピソードから学ぶ

 孔明には奇妙な矛盾があった。劉備玄徳らと一緒に蜀を攻めていた時には、中々勝利を収めることができず「蜀にこんなにも人材がいるとは」と驚いていた。ところが孔明が蜀の支配者となり最後の戦いの頃には「蜀には人材がいない」と孔明自身が嘆いている。人材がキラ星のごとくいたはずの蜀から、人材が消えてなくなってしまった。何故か?

(1)孔明に死期が迫った頃、孔明から敵将の司馬懿(しば・い)に使者が送られた。司馬懿が使者に孔明の働きぶりを尋ねると、使者は「朝は早くに起きて夜遅くまで執務しておられます。どんな細かい仕事でも部下に任せず、ご自身で処理します」と答えた。

(2)「泣いて馬謖を切る」という故事がある。馬謖孔明が後継者と期待する超優秀な部下だった。ある時この馬謖に敵陣を攻略させるに当たり、孔明は「陣地を山上に築いてはならない」と繰返し指示した。馬謖は優秀な故、この指示を守らず山上に陣地を構えた。そのため敵軍に包囲され水源地を敵に奪われて水が飲めなくなり降参してしまった。孔明は他の部下の手前、指示に従わず大敗の原因を作った馬謖を、泣きながら斬らざるを得なかった。

(1)のエピソード:部下に任せればいい些細なことにまで口を出していれば、部下は自分で考えることを止めてしまう。孔明の指示を待ち、それに従えば良いと考える部下を自ら作っていた、と言える。

(2)のエピソード:馬謖ほど優秀であれば、山上の陣地が危ないことに自分で気付けたはずだ。しかし孔明馬謖に対しても才能を信じていないかのように初歩的なことまで指示している。馬謖にすれば自分を信じて任せてくれないことに天の邪鬼になり、「戦略を逆にしても勝てることを見せてやる」とムキになったかもしれない。自分に自信があり優秀な人間ほど、事細かに指示されることが嫌いだ。自分が考える前に指示を出されてしまっては、功績はすべて指示を出した人間のものになってしまう。孔明馬謖自ら危険性に気付き戦略を立てるように仕向けるべきであった。

これらのエピソードから分かることは、孔明から見れば、どんな優秀な部下であっても自分の判断より劣っているように思えたのであろう。だから全部自分で判断し「最良の判断」に仕上げずにはいられなかった。

蜀から人材がなくなったのではない。孔明が蜀から人材を消してしまったのだ。孔明は「自分がやったほうが早い病」にかかり、見事な「指示待ち人間製造機」になってしまった。

部下が失敗したときにどう接するか?それによって指示待ち人間が作られてしまう。失敗した時にそれを責めると、次からは指示どおりにやって叱られないようにしようとする。こうして、立派な「指示待ち人間」がどんどん製造される。

 

その他、この本で特に印象に残ったことを記録に残します。

・上司の非常識な六訓

 ①部下ができたら楽になろうと思うなかれ

 ②上司は部下より無能で構わない

 ③威厳はなくて構わない

 ④部下に答えを教えるなかれ

 ⑤部下のモチベーションを上げようとするなかれ

 ⑥部下を指示なしで動かす

・私たちはともすると、「上司は部下よりも優秀でないといけない。部下に負けてはならない」と思い込み、部下をライバル視して競争してしまう。しかし上司は部下と能力を争ってはならない。自分より優秀な部下を使いこなすのが上司の醍醐味。部下から尊敬されることを望むのではなく、まずは自分から部下を尊敬すること。そうすれば自然と部下も自分を尊敬してくれる。

山本五十六の言葉

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」ここまでは有名、実は続きがある。

「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

有名な最初の言葉から、上司たるもの部下に見本を見せる必要がある、と思いがちだが、山本五十六も部下を承認しその能力や才能を認めて尊敬することの大切さを説いている。

・部下のモチベーションを上げようとしてはならない。苗を伸ばそうと引っ張れば根が切れてしまう。(助長※)モチベーションも無理やり引っ張り上げようとすれば、逆に部下のやる気を削いでしまう。モチベーションを上げようとするのではなく、削ぐ原因を排除することに注力することが大事。

※助長:中国の故事

孟子が弟子に語った「昔宗に生真面目な農夫がいた。彼は苗の成長が遅いのを心配し、成長を助けようと全ての苗を少しずつ引っ張った。それを知った息子が畑に走ったが、既に苗の根は切れ枯れてしまっていた」人は成果を焦って、元も子もなくしてしまうこと、の諌め

・創意工夫をする、つまり未知のことを知るためには仮説思考が重要になる。仮説思考とは「観察」→「推論」→「仮説」→「検証」→「考察」の順で考えること。人が生まれながらに実践している思考方法である。ところが、小学校に入り「既に答えは何処かにあり、それを覚えることが勉強」と思い込まされてしまうことで忘れてしまっている。

・部下に質問しながら、部下に考えてもらい、一緒になって部下の思考を深める。これはソクラテスの対話術として知られる「産婆術」そのもの。「産婆術」とは、相手の出した論説や概念を質問を重ねることで吟味しつつ、当人の意識していなかった新しい思想を生み出させる問答法をいう。

言い換えれば、「自らでは知恵を産む力はないが、他の人々がそれを助けて知恵を産む」ということ。ソクラテスは、この方法を母の仕事であった産婆に擬えて産婆術と呼んだ。

・知識とは、知と知の織物

記憶しようとすればするほど覚えられない。直ぐに忘れてしまう。最小限だけ覚えようとするほど覚えられない。記憶は、それ単体では引き出しにくい。様々な関連する記憶とともに覚えることで脳に定着し引き出すことも容易になる。まさに記憶(知)は、知単体で存在するものでなく、知と知が織り成す織物として存在する。

・ペルソナ:私たちは意識するしないに関わらず、地位や役割、場面に合わせて態度や行動を変える。つまり「役割を演じている」、これがユングが提唱した「ペルソナ」

もとは古代のローマの古典劇において演者が身につけていた仮面のこと。つまり私たちはふだんの生活の中で「仮面」をつけて暮らしている、ということ。

部下が期待に応えてくれない時、私たちは自分の気持ちを納得させるため「こいつは怠け者、どうしようもない奴」などのレッテルを貼って諦める。このとき上司の深層心理では部下に報復するためにレッテル張りをしている。すると部下は対抗するために、あるいは自分の内面・心を守るためにペルソナを被る。レッテル張りとペルソナ、上司と部下の報復合戦が始まる。

・「信頼している」と言って「期待」を押し付けてはならない。「信頼」と「期待」は別物。信頼は無償であるが、期待は見返りを求める。

・成果や成績のような外面を褒めてはならない。単にプレッシャーを与えるか、間違った優越感を与えることになる。

工夫や努力、苦労などの内面・プロセスを褒める。そうすればさらに改善しようというように改善意欲が湧いてくる。

・複数の部下に対する接し方には、シュタイナー理論が参考になる。シュタイナー理論とは、ドイツの心理学者シュタイナーが唱えた子育て理論。一言で言えば「公平な偏愛」。一見矛盾する言葉であるが、複数の子供がいる場合、目の前にいる子供に対して「あなたが一番好きよ」と接し、全員にそう思わせること。これにより子供たちは満ち足りた気持ちになり豊かに育つ。

・「叱りつけ恐怖を与えないと部下は動かない」という考えを持つ上司も多い。特に平社員時代優秀だった人、体育会系の縦社会で育った人に多い。このいまだに残る体育会系の恐怖により部下を動かすやり方は、日露戦争後に逃げ出す兵士に困った軍隊が、兵士を無理やり引き止める方法として採用したもの。兵士に考えることを止めさせ指示に従う従順な人間を作り出す手法。したがって恐怖による指導から自分で考える部下は絶対に育たない。

 

結局、「自分の頭で考えて動く部下」を育てるためには、次の3つが大切だと感じた。

 ①答えを教えるのではなく部下に発見させる

 ②部下には指示せず質問する

 ③部下が失敗しても咎めない

 

2019.3.3「異文化理解力」エリン・メイヤー

今週読み終えた本は1冊だけ、最近amazonプライムに入会し海外ドラマに嵌まってしまいました。「ゲーム・オブ・スローンズ」に始まり「グリム」と続き、今は「メンタリスト」に夢中です。本当に面白い!

結果、読書時間が減ってしまいました。明日からは計画的に時間配分を変えていくつもりです。

 

1 「異文化理解力」 エリン・メイヤー

この本は久しぶりに「目から鱗」の面白さ。日頃ビジネス上で感じている日本文化の特徴に「なるほど」と気付かされる内容です。

この本では、それぞれの国の文化(特にビジネス上の文化)を次の8つの切り口で比較しています。

①コミュニケーション

②評価

③説得

④リード(リーダーシップ)

⑤決断

⑥信頼

⑦見解の相違

⑧スケジューリング

この本では、これらの切り口それぞれに、どの国がどの位置にいるかの分布を示しています。もちろん同じ国であっても個人差はあるわけですが、一定の幅を持ちつつ国によって一定の傾向が見られるのです。また、相手をどのように感じるかは、その分布上の絶対的位置によるのではなく、自分との相対的位置関係で決まる、この理解が非常に需要である、と著者は強調しています。

それぞれの指標について簡単にまとめます。

①コミュニケーション

「ローコンテクスト」か「ハイコンテクスト」か、これを両端としてどこに位置づけられるかで、その国におけるコミュニケーションのあり方が分かる。

ローコンテクスト:良いコミュニケーションとは厳密で、シンプルで、明確なものである。メッセージは額面通りに受け取る。言葉は文脈によらず本来の意味で使われる。コミュニケーションの責任は送り手にある。

ハイコンテクスト:良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なものである。メッセージは行間で伝え、行間で受け取る。ほのめかして伝えられることが多く、はっきりと口にすることは少ない。言葉はそれが使われている文脈によって意味するところが変わる。受け手は文脈を理解する必要がある。コミュニケーションは送り手と受け手の双方に責任がある。また、ハイコンテクストの文化では言われた言葉だけでなく、言われなかったことからも意味を受け取らなくてはならない。

アジアの国々はハイコンテクスト側に位置するが、その中でも日本は最も極端にハイコンテクストである。長年に渡り単一民族で同じ歴史を共有していることに起因しているのだろう。

②評価

「直接的なネガティブ・フィードバック」と「間接的なネガティブ・フィードバック」に区分される。

直接的なフィードバック:同僚などへのネガティブ・フィードバックは、率直に、単刀直入に、正直に伝えられる。オランダ、ロシア、イスラエル、ドイツなどが典型例。

間接的なフィードバック:同僚などへのネガティブ・フィードバックは柔らかく、さり気なく、やんわりと伝えられる。ここでも日本を始めアジア諸国はこちらに位置する。ただ、中国は相対的に直接的フィードバック側に寄っているため、日本人は中国人が直接的にフィードバックすると感じる。

③説得

「原理優先」と「応用優先」の指標で理解できる。

原理優先:最初に理論や複雑な概念を理解してから事実や、発言や、意見を提示するように訓練されている。理論的な検討から結論に移るのが好ましいとされている。各事象の奥に潜む概念的な原理に価値が置かれる。

応用優先:事実や、発言や、意見(結論)を提示した後で、それを裏付けたり結論に説得力を持たせる概念を加えるように訓練されている。まとめたり箇条書きにしてメッセージや報告を伝えるのが好ましいとされている。具体的で実践的な議論が重視され、理論や哲学的な議論はビジネス環境では避けられる。アメリカの本に、やたらと多くの事例紹介が掲載されている理由が解った気がする。

イタリア、フランスなどは典型的な原理主義、イギリス、オーストラリア、カナダ、そしてアメリカなどアングロサクソン系の国々は応用優先である。この傾向は法律に対する考え方にも影響を与えている。

(参考)「コモン・ロー」と「シビル・ロー」

コモン・ローとは、先例主義であって制定法ではなく判例を中心とする法体系。シビル・ローとは、制定法(法典)を中心とする法体系である。

なお、この指標による区分はアジア諸国には当てはまらない。物事を見るときの捉え方に、欧米とアジアでは大きな違いがある。

主役重視:主役、中核となる特定のポイントに視点を合わせ物事を理解しようとする。欧米(特にアメリカ)がこれに該当する。

脇役重視:脇役、つまり背景など全体を眺め物事を理解しようとする。アジア諸国(特に日本)はこれに該当する。

アメリカ人と日本人に人物写真を撮らせると、アメリカ人は顔をアップにして撮る。日本人は背景を含め全身を撮る。

④リード(リーダーシップ)

これは「平等主義的」と「階層主義的」の指標で表される。

平等主義的:上司と部下の距離は近い。理想の上司とは平等な人びとの中のまとめ役である。組織はフラット。しばしば序列を越えてコミュニケーションが行われる。

階層主義的:上司と部下の距離は遠い。理想の上司とは最前線で導く強い旗振り役である。肩書が重要、組織は多層的で固定的。序列に沿ってコミュニケーションが行われる。

デンマーク、オランダ、スウェーデンなどは典型的な平等主義の国、日本を始めアジア諸国や中東の国は階層主義的な国に分類される。ヨーロッパの中でもイタリアやスペインはどちらかというと階層主義的に寄っている。これはローマ帝国の配下にあった国と一致する。中央集権的な帝国の一員であった歴史が階層主義に反映されたのだろう。一方、デンマークなどスカンジナビアの国々は平等主義的である。これは彼等がバイキングの子孫であることと関係しているようだ。バイキングは極めて平等主義的な組織であり誰もが自分がリーダであると考えていたほど。

また、プロテスタントは神と直接会話することからプロテスタントの国は平等主義的であり、カトリックの国は階層主義的な傾向がある。

アジア諸国が階層主義的なのは、孔子の影響が強いと考えられる。

⑤決断

「合意志向」か「トップダウン志向」かの違いがある。

合意志向:決断は全員の合意のうえグループでなされる。

トップダウン式:決断は個人(多くは上司)でなされる。

決断には、十分に議論し様々なリスクを検討し尽くした上で行われる「大文字の決断」と、とにかく早く決断し実行しながら、その決断を調整していく「小文字の決断」がある。変化の速いビジネス環境では「小文字の決断」が有利であろう。

アメリカの特徴として、組織・人間関係は平等主義的であるが決断(意思決定)はトップダウン式であるということ。ヨーロッパの平等主義的な国は、決断も合意志向が強い。

ドイツとアメリカの得意な点は、評価と決断のミスマッチにある。ドイツは決断においては合意志向であるにも関わらず、評価(ネガティブ・フィードバック)は直接的である。一方アメリカは、トップダウン式で決断するがネガティブ・フィードバックは間接的に行う。まず多くのポジティブ・フィードバックを行ったうえで控えめにネガティブ・フィードバックを行うのである。

⑥信頼

「タスクベース」と「関係ベース」に区分される。

タスクベース:信頼はビジネスに関連した活動によって築かれる。仕事の関係は状況によってくっついたり離れたり簡単にできる。いい仕事をしていれば頼りがいがあると思われ信頼される。

関係ベース:信頼は一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりして築かれる。仕事の関係はゆっくりと長い時間をかけて築かれる。個人的な時間も共有することで、また信頼できる友を共有していることで信頼される。

言い換えればタスクベースは「桃型」、関係ベースは「ココナッツ型」と言える。桃型は最初の一口二口は柔らかく甘いが、芯まで行くと硬い。一方ココナッツ型は、最初は硬く穴を開けるまでは時間がかかるが、一旦穴が開くと中は柔らかい。

⑦見解の相違

「対立型」と「対立回避型」に分けられる。

対立型:見解の相違や議論はチームや組織にとってポジティブなものと考えている。表立って対立するのは問題ないことであり、関係にネガティブな影響は与えない。

対立回避型:見解の相違や議論はチームや組織にとってネガティブなものだと考えている。表立って対立するのは問題で、グループの調和が乱れたり、関係にネガティブな影響を与える。

イスラエル、フランス、ドイツなど原理優先の国に「対立型」が多い。アジア諸国は「対立回避型」である。しかし中国、韓国の人は親しい仲(身内、友人など)では対立回避型であるが、外の人(部外者)に対しては対立を回避しない傾向がある。

対立型の国では、その人が持つ意見と人格は別のものと明確に区分される。フランスなどでは小さい頃から「テーゼ→アンチテーゼ→ジンテーゼ」のプロセスが重視され、議論の鋭い対立があるほど、良い結論が得られると教えられる。

一方、対立回避型の国では意見と人格は同一視される。意見を否定することは、その人を否定しプライドを傷つけることに繋がる。

ビジネスにおいては時により対立型が大切になる。(悪魔の代弁者が必要)

「提案をより良くするためには、その提案に対して反論を加えなくてはならない。反論して初めてその提案は良いものになる。」

⑧スケジューリング

「直線的な時間」と「柔軟な時間」に区分される。

直線的な時間:プロジェクトは連続的なものと捉えられ、一つの作業が終わったら次の作業へと進む。一度にひとつずつ。邪魔は入らない。重要なのは締切を守りスケジュールどおりに進むこと。柔軟性ではなく組織性や迅速さに価値が置かれる。

柔軟な時間:プロジェクトは流動的なものと捉えられ、場当たり的に仕事を進める。様々なことが同時に進行し邪魔が入っても受け入れられる。大切なのは順応性であり、組織性よりも柔軟性に価値が置かれる。

日本は明らかな「直線的な時間」、列車ダイヤの正確さに顕著に現れている。アメリカやドイツも同様。

他の国では許容される時間の幅が、フランスでは約10分、これが中国や中東やアフリカになると数時間、場合によれば数日になる。

ふだんは空気のように意識していないが、グローバルな視点で見ると、私たち日本人の考え方がいかに特殊であるか、まさに目から鱗です。

2019.2.24「EQこころの鍛え方」「ご機嫌の法則100」

今週は徹夜の仕事も多く読書が進まない一週間となりました。読み(聞き)終わったのは次の2冊。

1 「EQ こころの鍛え方」 高山直

2 「ご機嫌の法則100」 伊藤守

1は先日読んだダニエル・ゴールマンの「EQこころの知能指数」とは趣が違い、理論を説明するというより実践的なトレーニング方法を紹介、解説した本です。具体的なトレーニングとして66の法則を示し、どちらかといえばEQを対人関係を良好にする能力と位置づけ、その視点で語られています。特に心に残ったものを以下にあげます。

・EQの4つの能力、この4つの能力を経由してEQは発揮される。これが基本。

①感情の識別 ②感情の利用 ③感情の理解 ④感情の調整

①自分または他者の感情を識別し、言葉で表現する。

②課題を解決するために最適な感情を生み出す。または判断を適切に行うために相手に共感する。

③感情がどのように起こり、どのように移行するのかを理解する。

④望ましい決定をするうえで感情を活用する。適切な行動

のために自分の感情を調整する。

・人の感情には、「幸せ」「怒り」「嫌悪」「悲しみ」「恐れ」「驚き」の6つがあると言われている。「幸せ」以外はすべてネガティブな感情。だからEQが重要になる。

・EQはOS、IQは業務スキルなどと同様、OSの上で動くアプリである。アプリは常に変化する。それを支える優れたOSが必要。

・松井のいた星稜高校野球部の額に書かれている言葉。「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば人生が変わる。」

・「笑筋」を鍛える。つまり笑うときに使う筋肉を鍛える。これだけで心は楽になる。

・まずは「決める癖」をつける。たかがランチであろうと自分の意思で決めていれば、自分の行動を自分の意思で決める癖がつく。自分で自分の行動のイニシアチブを撮っているという感覚が大事。

・「ごちそうさま」の前に「ありがとう」を付けるだけで、心が開かれる。「ありがとう」は魔法の言葉。

・上手な「うんそう屋」になる。聞き上手のコツ。

・TodoリストやWilldoリストを作るときに守ること。やりたいことを書いてから、やるべきことを書く。この順番が大事。これにより自分の意思で自分の行動を決定している感覚が得られる。

・私の辞書には「不幸」という文字はない。

・「six seconds pose」怒りがこみ上げたら6秒 間を取る。1から6まで数を数える、または、好きな花の名前を6つ言うなど。そうするだけで感情がコントロールできる。

・いいことがあれば拍手する。拍手は相手を称賛し感動を伝える優れたツール。いい意見、行動には拍手で称賛する。拍手には相手を元気づける力がある。そして、拍手には場の雰囲気を変える魔法の力がある。拍手を日常の場でもっと使おう。

・会話の中で使うことで周りの雰囲気を変える言葉。

「明るい言葉」「褒める言葉」「積極的な言葉」「励ます言葉」「熱血語」

まずは、笑顔と拍手を実践してみよう!

最後に、この本を読んでなぜか思い出した(好きな)言葉

「変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ。」

2は、あっという間に読み終わる(聞き終わる)本です。この本は筆者である伊藤さんが、今までに出会った素敵な人たちの共通点を「ご機嫌」であることに気づき、ご機嫌でいるための条件を100にまとめたものです。先日読んだリチャード・カールソンの「小さいことにくよくよするな」に通ずる内容です。たまにはこういう軽い本もいいかもしれません。

 

2019.2.16「MaaSモビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ」「MBA生産性をあげる100の基本」

今週は次の2冊を読みました。

1 「MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ」日高洋祐ほか3名

2 「MBA 生産性をあげる100の基本」 グロービス、嶋田毅(A)

1 MaaSとは mobility as a Service の略で、ICT技術を活用し、個々人の移動を最適化するため様々な移動手段を統合することで利便性を飛躍的に高めるサービスを言います。日本は世界から10年は遅れていると筆者は言っています。本の中から大事だと感じたポイントを列記します。

・MaaSはフィンランド発の概念であり、通信自由化のあと多様なサービス、料金パッケージが生まれた通信業界からヒントを得て生み出された。

・MaaSには次のレベルが定義されている。

レベル1:情報の統合(日本の現状)

レベル2:予約・支払いの統合

レベル3:提供するサービスの統合

レベル4:社会全体目標の統合

・MaaSプラットフォームはあらゆる産業に繋がり、より上位のレイヤーに位置づけられる可能性がある。そうなると鉄道会社や自動車メーカーは、この新しく生まれたMaaSの統合プラットフォームの下位にぶら下がるビジネスになりかねない。

・あらゆる交通サービスが融合しMssAコントローラによりユーザーの位置情報や予定が共有され、それらを統括する高度な予測とパーソナイズされた制御を行う。これを2020年東京オリンピックまでに実現することを目標とすべき。

・日本版MaaSが目指すべき方向性には二つある。

都市部:①渋滞の緩和 ②高度な都市オペレーション

地方:①地域交通の再構築 ②持続可能な交通体型

これら同じ課題を抱える世界中に、都市機能として輸出する。

2は「MBA 100の基本」の続編。Audiobookで聞いたので聞き流した部分もありますが、気になったところは何度か聞き直しメモを取りました。本書では「土台スキル」「実行スキル」「成長スキル」の3部構成となっており、生産性を上げるスキルが簡潔に100項目にまとめられています。記憶に残ったものをいくつか記載します。

・会議に貢献する。会議は自分の存在を誇示したり、自説を披露する場ではない。多数決で結論を出すためのものでもない。会議はより良い意思決定をする場、私たちは色々な形で会議に貢献できる。

・意思決定には様々な思考の歪み、バイアスがかかってしまう。代表的なものとして「ハロー効果」「サンクコスト」「現状維持バイアス」「確証バイアス」「初頭効果または週末効果」

・人に伝えるための条件3つ。

①論理→人は理由を知りたい動物

②情理→人は論理だけでは動かない。感情で動く。

③倫理→最近特に重要視される。人は自分の価値観に合わないことでは動かない。

・顧客が要求するQCDを実現できるか、が大事。

Q:品質(Quality) C:コスト(Cost) D:納期(Delivery)

・PM理論、社会心理学の三隅二不二が提唱した。リーダシップを、「目標を達成する能力(P)」と、「メンバー間の人間関係を良好に保ち集団や組織を維持・強化する能力(M)」の二つの能力要素に分け、その大小の組合せで4つのタイプに分類したもの。PとMが共に高いPM型のリーダシップが望ましい。

・GEではリーダーには次の”4E”が大切だと言われている。

①Energy:常に高いエネルギーを持っている

②Energize:エナジャイズ、相手のエネルギーを高める

③Edge:タフな決断や判断ができる

④Execute:プランを行動に移す実行力がある

・successの法則とは、プレゼンで成功するための6つの要素。「Simple(シンプル)」「Unexpected(意外性)」「Concrete(具体性)」「Credible(信頼性)」「Emotional(感情に訴える)」「Story(物語性)」

・スキルは陳腐化する。陳腐化しない・しにくいスキルを身につけることが大事。

マネジメントを学ぶスキルとして経営学者ロバート・L・カッツが提唱した「カッツモデル」がある。マネジメントのレベルに応じて重要なスキルを上から「コンセプチュアル・スキル(物事を概念化する能力)」「ヒューマン・スキル(対人関係スキル)」「テクニカル・スキル(業務遂行スキル」の3つ。上位のスキル(コンセプチュアル・スキルやヒューマン・スキル)は陳腐化しにくいスキルと言える。